『カムカムエヴリバディ』安子と稔に立ちはだかった現実の壁 儚い夢の終わり
「あなたがたちばなの娘さん?」。安子(上白石萌音)の前に立った美都里(YOU)。探るような目で安子を見ると、やや間を置いて話し始めた。
『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第12話。美都里が語る。「雉真の社長ともあろう主人が、よりによって小せえ商店街の小せえ店で。それで思い出したんよ」。たちばなのおはぎが雉真家の食卓に並んだのはあれが最初だった。大学予科生になった稔(松村北斗)の初めての帰省。その頃から夫の千吉(段田安則)はたちばなの和菓子を客に出すようになったが、よもや稔と安子がつながっていたとは。
美都里は菓子を受け取らずに代金だけを安子に渡す。それはまるで手切れ金のようだった。突然のことに戸惑う安子に「二度と稔に近づかないで」と言って背を向け、門を閉じる。「小せえ店」や「暮らしの足しに」という言葉から、明らかに美都里が安子を見下していることがわかるが、それ以上にはっきりと拒絶の意思が伝わってきた。菓子を夫や息子の口に入れさせないことは、今後たちばなと関係を持たないという意志の表れであり、雉真の家に安子の居場所がないことを示していた。
きぬ(小野花梨)から安子のことを聞いた稔は母親を責める。帰宅した千吉を前に、稔は「父さんや母さんが何と言おうと、僕は安子さんと一緒になります」と意志が固いことを強調する。だが千吉は意外にも「そこまで言うんならおめえの好きにしたらええ」と了承。ただし「その代わり家を出え。雉真の名を捨てて、あの菓子屋の婿になりゃあええ。その覚悟があるんか」と続けることも忘れなかった。