『二月の勝者』リアルな受験描写の裏にある“癒やし” 柳楽優弥演じる黒木が導く親子関係

『二月の勝者』リアルな受験描写にある癒やし

 受験は誰のためのものなのか。子どもは、親の理想を叶えるための道具ではないはず。『二月の勝者-絶対合格の教室-』(日本テレビ系)第5話では改めて受験の大前提、親子とは何かを示した。

 中学受験の天王山・夏期講習を迎えた「桜花ゼミナール」では、暑さやストレスから生徒たちのトラブルが続いていた。ある日、不動の成績トップ・順(羽村仁成)が海斗(伊藤駿太)に暴言を吐き、海斗が殴りかかるという事件が起こる。

 順の物言いーー成績で人を見て「ゴミ」呼ばわりする背景には、父親(金子貴俊)の影響もあった(実際は他にも理由があり、のちに順から海斗に明かされたのだが)。順は自宅で、父の厳しい管理・監視のもと机に向かっていた。父は、順の成績が芳しくないときには暴力的な言動に出ることもあり、その矛先は母親(遠藤久美子)に向かう。息つくことも許されない緊張感が、家の中に漂っていた。

 子どもを思う親の心、その示し方は、親の数だけある。子どもの将来を思えば、ときには心を鬼にして厳しく接することも必要だろう。けれど本当に「鬼」になってはいけない。「塾をさぼる」というSOSを出した子どもを、さらに追い込むような父親の言葉と態度は、どう寛容に見ても子どものためとは思えない。

 順の行方不明が判明したときこそ、まず夫の反応を気にして混乱していた母だったが、無事に帰ってきた順の姿を見るなり駆け寄って抱きしめ、お腹が空いているんじゃないかとその身を案じた。塾をやめたっていい、中学受験をやめたっていいと、苦しみから救い出したいとする思いを伝えた。たとえ現実的ではない提案だとしても、母の優しさが順を板挟みにしたとしても、この姿こそ親の愛情であると信じたい。

 第5話のもう一人の主人公が海斗である。優秀な双子の弟を持ったゆえに「期待されていないから」と、諦めを通り越し達観したような言葉を並べる海斗だが、順の言葉にカッとなり掴みかかったということは「悔しい」という大切な心を失っていない。だからこそ黒木(柳楽優弥)もフォローしなかったのだろう。きっと黒木は、海斗の持つ底力を信じている。海斗は決して、可哀想だと庇われるべき子どもではない。

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