『二月の勝者』で溢れ出る柳楽優弥の魅力 多彩な役柄を演じる力量に迫る
最高にバイオレンスな『ディストラクション・ベイビーズ』
万人におすすめできるジャンルの映画ではないのだが、狂気的な柳楽優弥をご所望の方に観てもらいたいのが『ディストラクション・ベイビーズ』である。のどかな港町で喧嘩に明け暮れる少年・芦原泰良(柳楽優弥)。セリフ数は最小限、すれ違った人間を片っ端から殴ってまわる狂った男を演じている。
ドラマ『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)で演じた道上まりぶや、劇場版『今日から俺は!!』(2020年)の柳鋭次など、ある意味で狂っていると言えるキャラクターを多く演じてきた柳楽優弥。しかし、どの役柄も『ディストラクション・ベイビーズ』の泰良には及ばない。狂気が最高点の純度に達すると、たちまち恐怖や畏怖の念が立ち上るのだと痛感する。
本作では菅田将暉が相棒役として共演。撮影当時のエピソードを、2021年10月10日放送のバラエティ番組『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)にて語っている。柳楽優弥演じる泰良に対し、からかうようなアドリブをしてみせたところ、ピリッと空気が変わったのだそうだ。「演技だとわかってはいても怖かった」「人とは違うスイッチが入る感じ、真似できない」と熱弁する菅田将暉に、その場に列席していた他の俳優陣も同意。役者界の中でも、柳楽優弥の没頭力や憑依力については群を抜いているようだ。
筆者としては、中盤、小松菜奈演じる那奈に対し笑顔で詰め寄る柳楽優弥の演技が好きである。図らずも事件に関わってしまった彼女に「どうやった?」と繰り返し聞く様子には、さまざまな意味で背筋が震えた。ホラーやスリラーものに抵抗がない方は、ぜひ。
実写版『銀魂2』で唯一無二の土方十四郎を実現
週刊少年ジャンプで連載されていた大人気漫画『銀魂』の実写劇場版にて、土方十四郎役を演じた柳楽優弥。本作には小栗旬、菅田将暉、橋本環奈、吉沢亮、長澤まさみなど、数え上げればキリがないほどに錚々たる役者が出演している(後に映画『太陽の子』で共演する三浦春馬も出演、感慨深い作品である)。
そんな中で柳楽の魅力が光るのが『銀魂2 掟は破るためにこそある』。根本から性格を変えてしまう謎のチップを脊椎に埋められてしまい、ヘタレオタクに変身してしまう土方。もともとは常にタバコを口にくわえ、斜に構えた物言いをするも情に厚い性格だった。クールな土方からヘタレオタクにガラリと豹変するギャップは、よりカッコよさが際立つものとなっている。
チップの効果のせいでヘタレオタクに変身するも、時おり元のクールな性格が顔を出す土方。チップを抜き出す方法を模索する展開のなかで、土方が「自分でもわかる、このタバコを吸い終わったら、俺はもう……」と嘆くシーンがある。自我が失われる恐怖に耐えながらもタバコを吸う仕草には、彼のアイデンティティに対する執着が感じられて何ともいえない気持ちにさせられる。
「漫画の実写化はちょっと……」と抵抗感を持つ方も多いかもしれないが、柳楽優弥ファンなら見て損はない作品だ。吉沢亮が演じる沖田総悟もなかなかのクオリティなので、ぜひ合わせて楽しんでいただきたい。
今後の柳楽優弥の動向として、ビートたけし役を演じるNetflix映画『浅草キッド』の配信が控えている。柳楽優弥がビートたけしを演じるとは、これまでとは何味も違う彼の姿が見られそうだ。役者・柳楽優弥の境地が新しく開かれるのを待ちわびたい。
■放送情報
『二月の勝者ー絶対合格の教室ー』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演:柳楽優弥、井上真央、加藤シゲアキ、池田鉄洋、瀧内公美、今井隆文、加治将樹、住田萌乃、岸部一徳ほか
原作:『二月の勝者ー絶対合格の教室ー』高瀬志帆(小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ』連載中)
脚本:成瀬活雄
音楽:小西康陽
主題歌: DISH//「沈丁花」(ソニー・ミュージックレコーズ)
テーマソング:NEWS 「未来へ」(Johnny’s Entertainment Record)
演出:鈴木勇馬ほか
プロデューサー:次屋尚、大塚英治(ケイファクトリー)
制作協力:ケイファクトリー
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
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