前田敦子&大島優子、“アイドル”イメージ脱却はいつから? 俳優としての転換期を振り返る
大島優子は意識的にアイドル性を消してきた
大島優子は子役時代からドラマなどに出演。『D×D』(1997年/日本テレビ系)では仲間由紀恵演じるヒロインの幼少時代の役もつとめた。以降はアイドル活動に力をいれるようになり、一度は女優業を封印。しかし雑誌『Quick Japan Vol.87』(2009年)でのインタビューによると、AKB48のシングル曲「軽蔑していた愛情」(2007年)のミュージックビデオ撮影時、屋上から飛び降りる直前で踏みとどまって泣き崩れる役に挑んだことで、「本気で女優をやろう」と思いが再燃したという。
大島でまず印象に残ったのが映画『スイートリトルライズ』(2010年)だ。同作で大島は、手当てをもらって愛人をやっている女性を演じた。劇中では「でもさ、最近は腰が引けて」と愛人との関係が微妙であることを、台詞として口にする。当時はアイドル活動真っ只中だった大島だが、この役では生々しい現実味と大人の肌触りがあった。
映画『闇金ウシジマくん』(2012年)では、母親の借金を肩代わりし、返済のために出会い系カフェで働き始める女性役。薄幸なキャラクターを見事に自分のものにしており、『スイートリトルライズ』同様、良い意味で「アイドルらしからぬ」という言葉が似合う演技だった。
極めつけは映画『紙の月』(2014年)だろう。彼女は、宮沢りえ演じるヒロインをいくつかの言葉で破滅の道へと向かわせ、観る者の感情をざわつかせるOLに扮した。吉田大八監督は「人間離れした悪魔的な雰囲気を求めていた」と起用経緯を語り、「大島優子は映画の切り札=ジョーカー」と賞賛した。
大島はアイドル時代、演技のときは自覚的に「アイドル性を消す」と語っていた。清純なキャラクターではなく、いわゆる「汚れ役」を数多くチョイスしてきたのも、その気持ちのあらわれかもしれない。2021年に出演したドラマ『ネメシス』(日本テレビ系)や『正義の天秤』(NHK)、映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』など各作品では、いずれもバイプレイヤーとして良い味を出している。役者としての自分のポジションのひとつを固めつつある。
前田、大島ともに公私の環境が変化したことで、これまでとはまた違った展開が期待できるのではないだろうか。そんな彼女たちを追いかける、元アイドルたちのこれからの奮闘も楽しみだ。