永瀬廉、『おかえりモネ』に刻まれた俳優としての凄さ 亮と未知の幸せな結末に寄せて

『おかえりモネ』に刻まれた永瀬廉の凄さ

 いちばん近くにいて、当事者ではない百音が最初は遠慮がちに、でも毅然とした態度で分かり合いたいという思いを伝えたことで未知や亮にも変化が起きた。

 「お前に何が分かる、そう思ってきたよ、ずっと。俺以外の全員に」と亮は第110話で言い放った。幸せになることにさえ罪悪感を覚えるほどの過酷な体験をした当事者である亮や未知。彼らをあえて物語の主人公としなかったことで、なおさら相手の痛みを分かろうとすること、心が通じ合うことの尊さが際立ったようにも思える。

 亮と心を通わせ、百音にすべてを話して背中を押されたことで島を離れて、好きな研究のため東京の大学行きを決意する未知。蒔田彩珠演じる未知の百音に対する複雑な感情ややり切れなさ、ふと見せる幼い素朴な表情には目が釘付けになった。

 そして、亮は自分の船を手に入れ、父・新次(浅野忠信)や未知らに見送られて颯爽と船出する。大事な人がいることで、その人を失う怖さを考えてしまっていた繊細な心を表現し、自信と逞しさを身につけたことで前を向く亮を演じ切った永瀬廉も素晴らしかった。

 最終回直前まで過去に縛られていた亮と未知の新たな旅立ち。未来は明るいことを暗示してくれるような演技を見せてくれた俳優陣に拍手を贈りたい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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