永瀬廉、『おかえりモネ』に刻まれた俳優としての凄さ 亮と未知の幸せな結末に寄せて

『おかえりモネ』に刻まれた永瀬廉の凄さ

 連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK総合)の第120話が10月29日に放送され、物語が完結した。最終回で百音(清原果耶)は幼なじみの亮(永瀬廉)や妹の未知(蒔田彩珠)らの前で、東日本大震災以来ずっと封印していたアルトサックスを手に取ることができた。

 「音楽なんて何の役にも立たないよ」と音楽を楽しむことにさえ罪悪感で苦しくなるような痛みを抱え、「誰かの役に立ちたい」と悩み続けてきた百音。震災の日に島にいなかった後ろめたさ、無力な自分に対する不甲斐なさと向き合い、やっと自分の言葉で過去の思いを伝えた百音に、未知が「おかえり」と声をかけ、続けて亮も「おかえりモネ」と笑顔を見せた。

 百音に対して「とらわれてきたのは、俺やみーちゃんだけじゃないんじゃないの?」と言ったのも亮だが、震災によって一人では抱えきれないほどの痛みを感じてきた亮や未知に、あの日言ってもらえなかった「おかえり」を言葉にしてもらうことで百音はやっと救われた。子どもの頃のように気兼ねなく、普通に笑える日がこうして訪れることを幼なじみそれぞれが待ちこがれていたのだった。

 本作は、どんなに大切な相手とでも、同じ痛みを分かち合えないつらさを丁寧に描き続けてきた。亮は未知に第116話で「時々、俺より苦しそうなんだよね。やっぱ、何かにずっと縛られてきたんだろうなって、感じることがある。そういうのは、俺だから感じてやれんだよな。ほかのやつには絶対分かんない。でも、俺なら、みーちゃんが抱えてるもん、分かんなくても想像できる。それは、俺らだからだし、みーちゃん心の底から笑えるようにしてやれんの、たぶん俺しかいない」と、最高にして最強の愛の言葉を伝えている。

 おまけに「俺さ、あの嵐ん時ね、ひっくり返りそうな船ん中で、このまま死ぬかもとか全然思わなかった。ただ一個だけ……、みーちゃんに会いたいなって思ってた」なんて、愛の告白は受ける専門でモテる亮がここまで言ってくれるなんて、みーちゃんも待った甲斐がある。

 この言葉が未知の心にどれほど響いたか……。第118話で百音に大学進学を勧められた未知は、東日本大震災から9年間、誰にも言えなかった「おばあちゃんを置いて逃げた」という衝撃の告白をする。

「私……あの時……おばあちゃんを置いて逃げた。どう言っても、引っ張っても、おばあちゃん動いてくれなくて。海が見えて、一人で逃げた」「その後、たぶん、大人たちが来て、おばあちゃんを助けてくれたんだと思う。でも……私は……絶対、自分を許すことはできない。ここで、自分が何かの役に立てれば、いつか……」と初めて、それまで誰にも言えず一人で苦しんできた思いを口にした。

 百音を傷つけた未知の「お姉ちゃん、津波見てないもんね」という言葉も、振り返ると言われた百音よりも未知のほうが痛みを感じているように見える。成績優秀で進学するだろうと思われていた未知が早々に地元での就職を決めたのも、亮の言動に一喜一憂して過剰に反応してしまうのも、亮と同じように幸せになってはいけないような思いにとらわれてしまったからなのだろう。

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