『おかえりモネ』清原果耶が成し遂げた役割とは 百音の痛みを繊細に表現

『おかえりモネ』清原果耶が成し遂げた役割

 痛みも傷も“点”ではない。ずっとずっと心に突っかかりがあり罪悪感に苛まれ、ふとした時にそれが呼び起こされ、時に飲み込まれそうにもなる。清原はじめ、本作のキャスト陣の演技には、自身の傷とともに歩んできた登場人物たちの画面には写り切らない“時間”が滲む。百音が最初に気象に魅了されたのが山と海は繋がっていて、全部は繋がっていることに気づいた瞬間だったように、“過去の一点”は“今”と切っても切り離せない関係にあること、自分とは全く違う人生を歩んできたかに見える相手の痛みが自分にも身に覚えがあるものであるということ、そんな繋がりを重層的に見せてくれている。

 清原は百音が背負ってしまった後悔などまだ縁取られていないモヤモヤとした感情そのままを、多くを語らずとも表情や佇まいから表現していた。台詞のないシーンでこそ深い感情表現が得意な清原の芝居の真髄が光っていたように思える。

 水がひたひたに溜まっており表面張力が働いている状態に外界から“少し”の刺激が加わり水滴がポツリと静かに溢れる、思わず見逃してしまいそうになる感情の発露の数々を決して見過ごさず丁寧に見せてくれる芝居にとことん惹き込まれた。この“少し”の刺激が実際にはとても大きな一歩へのきっかけになったり、後々自身の指針になるようなことが現実社会でも往々にしてある。そして誰かのコップから溢れた一滴のしずくがまた誰かの乾いた心に静かにそっと波及していく、そんな連鎖も本作では描かれている。

 最終週「あなたが思う未来へ」で描かれる百音自身の未来、彼女と菅波の将来、そして彼女を取り巻く全ての大切な人たちが漕ぎ出す“これから”をしっかりと見届けたい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる