清原果耶は今までと違う朝ドラヒロインだった 『おかえりモネ』が描いた未来への希望
『おかえりモネ』(NHK総合)も残すところあと5話。最終週「あなたが思う未来へ」では、百音(清原果耶)の家族に挨拶するために菅波(坂口健太郎)が気仙沼を訪れ、遠距離恋愛中だった2人が久しぶりに顔を合わせるシーンが描かれる。
振り返ると、震災の当日に島を離れていたことから無力感と罪悪感に苛まれ、島を離れていた百音と医師だった菅波が出会ったのは登米の診療所だった。理屈っぽくて、人を寄せつけない雰囲気を醸しながらも、森林組合で仕事をしながら気象予報士を目指す百音の勉強を教えてくれる誠実な菅波を坂口健太郎が好演。視聴者の心に火をつけ、「#俺たちの菅波」
というハッシュタグで話題になった。
百音が気象予報士の試験に合格して上京すると、2人は東京のコインランドリーでまさかの再会を果たす。自分の気持ちを軽々しく口にしない百音と不器用な菅波は互いを必要としながらも恋愛モードはなかなか訪れず、やきもき見守っていた登米の森林組合の人たちに仲良く2人で挨拶に行くまでには出会ってから2年半以上の月日が流れていた。
登米で出会い、東京で再会して、ようやく菅波は百音の家族に会う目的のために気仙沼へ。待ち合わせ時間よりも早く百音の職場に着いた菅波が亮(永瀬廉)と鉢合わせして、咄嗟に出た言葉が「19対5か……。圧倒的に分が悪いな」というのも菅波らしい。百音が島で亮のそばにいた時間が19年、菅波と出会ってからの時間は5年という年数の問題。おそらく第76話で「分かりませんでした? 何か、空気感じませんでした? あの2人は昔から通じ合って……」と未知に言われた言葉が菅波の心にも残っているのだろう。数値化して冷静にやきもちを妬くのも、さすが俺たちの菅波。
こうして菅波は不器用ながらもやきもちを妬くが、百音の菅波に対する思いは信頼に根づいたもので、通常の恋愛感情とはどうやら別次元のようなのだ。その関係も特別で、新鮮に感じていた。
そこで、10月19日放送の『あさイチ』(NHK総合)に百音役の清原果耶が出演したときの「大前提として(百音は)恋愛軸で生きてきていない」という言葉を聞いて、妙にストンと胸に落ちた。心情を気軽に吐露しない、大切なことを言葉にしないヒロインの恋愛はこの作品の大きな特徴ともいえる。前向きで明るい性格のヒロインの恋を思わず応援したくなるのが朝ドラの醍醐味でもあるが、本作はヒロインに恋する菅波を応援する側に回った形だ。
恋愛は個人的な感情がすべてで、良いも悪いも正解も間違いもない。恋愛軸で生きていない百音とは対照的に、妹の未知(蒔田彩珠)は地元に縛られているだけでなく、亮の言動に一喜一憂。誰よりも亮を理解し、そばにいたいのに、亮が百音にしか本心を明かさないことで不安になり、百音に対しても強く当たってしまうことがあった。
また、百音の親友の明日美(恒松祐里)は「恋愛は距離だよ。そばにいることが一番大事なの」「人の気持ちなんか、ふわふわしたものなんだよ。自分が大好きで、相手も自分のこと好きでいてくれる瞬間なんてね、ホント一瞬しかないんだからね。奇跡だからね! この一瞬を逃したら、次の日にはいろんなことが変わっちゃうかもしれないんだよ。それで変わっちゃったらもう、元には戻らない」という恋愛に関する名言を連発している。保育園の頃から一途に亮に片思いしていたが、現在は気象予報士の内田(清水尋也)と東京で良い関係を築いている。「#俺たちの菅波」のように、「#俺たちの明日美」「#俺たちのすーちゃん」といったハッシュタグで彼女の恋を応援するSNSコメントも目立った。