『おかえりモネ』永瀬廉が体現した亮の心の変化 「幸せになってもいいのかな」に至るまで
そして、こんなときでも亮は未知に弱いところを見せようとしない。「俺、大丈夫だから」と繰り返し、もう縛られなくていいよと離れようとする。泣く未知を心配して百音が会話に参加。
「りょーちん、笑わなくていいよ。大丈夫って言いながら、本当は何て思ってたの?」
百音に聞かれ、亮はついに「お前に何が分かる、そう思ってきたよ。ずっと! 俺以外の全員に!」と心の深い部分にあった本音を放った。「俺以外の全員に!」を加えたのは百音への衝撃をやわらげるための亮の配慮かとも感じられるほど、百音は亮が抑えている負の感情を引き出してしまうのだ。
震災で大切な人を失い、生活を一変させてつらい思いや悩みを抱えていた亮が百音だけに見せる揺らぎや微かな甘えを表現する永瀬廉の繊細な演技に目が釘付けになると同時に、重いシーンでも彼の根底にある優しさが消えないのはさすがとしか言いようがない。苦しそうに本音をぶちまけた後の亮に朝日のやわらかい光が射すのも印象的だった。
印象的といえば第16週「若き者たち」の第79話のコインランドリーのシーン。我慢強く、一人で平気なふりをしてきた亮が本当に弱って東京で百音だけに助けを求めたときに、「これは違う」「これで救われる?」と百音はきっぱり拒否した。あのとき、亮の哀しげな表情には夕日が差し込んでいた。
亮が「ごめん、俺やっぱモネしか言える相手いない」と伝えたことを未知に嫉妬され、やむにやまれぬ亮の告白の拒絶を「お姉ちゃんは正しいけど、冷たいよ」と言われた百音。その後ずっとそばにいて支えてくれた未知と亮は離れるべきではないと百音の判断を押し付けていいのか、そこは確かに疑問が残る。
ただ、未知が「一緒にいたいってだけじゃダメなの?」と自然に歩み寄って手を握り、「俺、幸せになってもいいのかな」と朝日を受けた亮の顔が輝いたとき、2人の心の距離は近くなったことが感じられた。百音に拒否された直後に「そもそも誰かを好きになるとか、そういうのもういいんだった」と意地を張った亮だったが、誰かを好きになって幸せになってもいいんだと枷を外せたのは確かだろう。
未知との関係に変化が訪れた今、亮にとって問題なのは父親である新次と本音で向き合って話さなければならないことだ。次週は亮、新次それぞれの決断が見られるはずで、永瀬廉の演技にもまだまだ注目していたい。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK