『おかえりモネ』永瀬廉が体現した亮の心の変化 「幸せになってもいいのかな」に至るまで

『おかえりモネ』永瀬廉の巧みな芝居

 『おかえりモネ』(NHK総合)の第22週「嵐の気仙沼」では、船を買う資金を稼ぐためにクロマグロ漁に出た亮(永瀬廉)の船が嵐に遭遇。百音(清原果耶)は漁協組合長の滋郎(菅原大吉)に最新の気象情報を伝えるだけでなく、東京の内田(清水尋也)や野坂(森田望智)らの協力を得て、動けなくなった亮の船と連絡を取り、帰港を待った。震災以降、船に乗っていない新次(浅野忠信)も漁協に出向き、的確な指示を出して港で一人、亮の無事を祈っていた。

 永瀬廉が演じる亮は、どんなときでも周囲を気遣う優しい性格。漁師だった父の新次が震災で船を失い、最愛の妻を亡くした悲しみから立ち直れないままでいることをずっと一人で悩み続けているが、つらさを他人に見せることはなかった。未知(蒔田彩珠)がそばにいても、その心の距離は縮まることがなかった。

 第8週「それでも海は」の第40話で亮が珍しく自分の気持ちを幼なじみの前で語ったことがあった。百音が気象予報士試験の勉強を実家でしていた年末、幼なじみが集まりゲームを始めたときのことだ。

「俺らは親たちとは違うからさ。俺は親父とは違うから。過去に縛られたまんまで何になるよ。こっから先の未来まで壊されてたまるかっつうの! 俺らは俺らの好き勝手やって生きていく。音楽だってなんだって、うちの仕事捨てたっていい。地元好きなら地元盛り上げんのもいいし、大学行かずにさっさとやりたい仕事に就くのもいい。勢いで東京行ったっていい。急に苦手な勉強始めたっていい。俺らが前を向くしかないんだ」

 過去を吹っ切るかのような、強い口調で言い切った亮。

 拾は、前日に新次が行方不明になったと連絡があり、アルコール依存症の治療をしていたのにもかかわらず、泥酔して永浦家に連れてこられたのだった。うれしいことがあっても一緒に喜び合える相手がいない……。新次の「俺は立ち治らねぇよ。絶対に立ち直らねぇ!」という悲痛な叫びに対して、苦しんで悩み続けた亮が出したのが「俺らが前を向くしかないんだ」という答えだった。

 そんな亮がしっかりと前を向き、漁師として一人前になって船を買おうとしている。しかも、新次の好きな型の船を購入すればまた船に乗ってくれるのではと期待をしている。年始のクロマグロ漁に出たのも船を早く買いたい思いからだった。

 新次は亮をよく「真面目」だと表現するが、モテるのに浮かれたところを見せないクールさと、憂いを帯びた切ない表情はそれだけでも魅力的だが、ひたむきでストイックな印象も強く残る。穏やかな笑顔に隠された複雑な内面の見せ方にも永瀬の演技の巧みさが光る。

 嵐が収まり、みんなの祈りが通じてやっと帰港できた亮。憔悴していても漁協の人たちに心配をかけたことを丁寧に侘び、迎えに来てくれた未知を気遣う。普通なら「疲れたから寝る」と自宅直行が許されるところだが、亮は未知に「お姉ちゃんも心配してたから顔見せたら」と言われて、百音が待機する「海のまち 市民プラザ」へと立ち寄る。優しいだけでなくタフで礼儀正しい。新次が言うように真面目すぎる。



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