『007』新作、大ヒットスタート! コロナ禍による「外国映画離れ」は杞憂だった?

コロナ禍による外国映画離れは杞憂だった?

 全国的に緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置が明けた先週末、初登場1位となったのは『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』。土日2日間の動員が28万2000人、興収が4億3100万円。10月1日の初日から3日間の累計では動員が42万1995人、興収が6億1090万2320円。6年前の2015年12月に公開された、同じくダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドを演じた前作『007 スペクター』のオープニング3日間の成績は動員34万6701人、興収4億7150万8100円だったので、一見大幅にアップしたように見えるが、同作は海外での公開から時間差のあるブロックバスター作品で当時頻繁に行われていた先行公開があったので、ヒットの勢いとしてはほぼ同水準と言っていい。その『007 スペクター』の最終興収は29.6億円。したがって、今回の『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は30億円超えが興収の目標となるだろう。

 先週の同コラム(『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』とともに映画館に「日常」が戻ってくる)で、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が「コロナ以降」の興行を占う上での試金石になると書いた。「コロナ禍において『日本人の外国映画離れ』は進んでしまったのか?」という問いかけについては、ひとまず「強力なシリーズ作品については『外国映画離れ』は起きていない」と言っていいだろう。今後も12月3日公開の『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(前作『ヴェノム』の最終興収は22.5億円)、現在のところ日本公開日は発表されていないが12月17日全米公開の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(前作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の最終興収は30.5億円)などの人気シリーズ作品は安泰なのではないか。人気シリーズ作品の強みは、細やかなプロモーション展開などをしなくても、観客から作品が認知されているところにある。

 一方で、同じシリーズもの、同じユニバース作品でも、11月5日に日本公開が迫ったディズニー配給の『エターナルズ』はかなり読みにくい。現行フランチャイズでは最大のブランドであるマーベル・シネマティック・ユニバース作品とはいえ、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』同様に単独シリーズとしては初めての作品。その『シャン・チー』は出足こそそこまで悪くなかったものの、10月3日までの31日間で動員61万928人、興収9億2850万9510円と、いまだ興収10億にも達してない。同じく初単独作ではあったもののキャラクターとしてはお馴染みのMCU映画として前作にあたる『ブラック・ウィドウ』も、通常通り公開されていれば大ヒットが期待できたものの、同時期のディズニープラスでの配信問題がこじれて公開劇場が限られたことによって結局最終興収は10億円に満たなかった。また、コロナ禍であったことも影響しているのだろうが、この2作に関しては明らかにプロモーションも足りていなかった。

 そういう意味でも注目すべきは、既にアメリカを除く世界各国で公開されて大ヒットを記録している10月15日公開(アメリカ公開は日本よりも遅い10月22日)の『DUNE/デューン 砂の惑星』の興行だろう。大昔に同じ原作の映画化作品もあり、今後はシリーズ化の可能性もあるものの、現時点では事実上の単独作と言っていいブロックバスター作品。この作品が、昨年コロナ禍の外国映画として孤軍奮闘した『TENET テネット』(最終興収27.3億円)クラスのヒットを記録するようだったら、改めて「コロナ禍によって『日本人の外国映画離れ』は進んでいない」と言えるのではないか。

 それにしても、こうして1ヶ月先、2ヶ月先の公開作品のことを決定している公開日(『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』も早く発表を!)とともに、ウイルス感染拡大の影響や、特定の配給会社の作品の劇場からの締め出しなどの変数を考えずに普通に予測できる日々が戻ってきて本当に嬉しい。どうかこの平穏な日々が続きますように。

■公開情報
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
全国公開中
監督:キャリー・フクナガ
製作:バーバラ・ブロッコリ、マイケル・G・ウィルソン 
脚本:ニール・パーヴィス、ロバート・ウェイド、スコット・バーンズ、キャリー・フクナガ、フィービー・ウォーラー=ブリッジ
出演:ダニエル・クレイグ、レイフ・ファインズ、ナオミ・ハリス、レア・セドゥ、ベン・ウィショー、ジェフリー・ライト、アナ・デ・アルマス、ラッシャーナ・リンチ、ビリー・マグヌッセン、ラミ・マレック
主題歌:ビリー・アイリッシュ「No Time To Die」
配給:東宝東和
(c)2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.
公式Twitter:https://twitter.com/007
公式Facebook:www.facebook.com/JamesBond007

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