大ヒットスタート『マスカレード・ナイト』、テレビ局をまたいだ異例の宣伝展開を考える

『マスカレード・ナイト』異例の宣伝展開

 先週末の動員ランキングは、9月17日(金)に公開された『マスカレード・ナイト』が土日2日間で動員37万4000人、興収5億3600万円をあげて初登場1位となった。初日から9月20日(祝)までの4日間の累計は動員が67万8000人、興収が9億4000万円。今年公開された実写の日本映画としては、7月公開の『東京リベンジャーズ』を上回って今年最高のオープニング成績を記録したことになる。2019年1月に公開されて、最終興収46.4億円の大ヒットを記録した前作『マスカレード・ホテル』との比較では、初週土日2日間の成績で約15%のダウン。もっとも、オープニングからの数日間を均した数字は拮抗していて、ほぼ前作と同じ水準のスタートダッシュと言っていいだろう。

 『マスカレード・ナイト』の大ヒットスタートは、昨年3月から続いてきたパンデミックによる全国的な映画館休業を挟んだ映画興行の落ち込みが、そろそろひと段落したことを示していると言えるだろう。もちろん、この1年半の間にも『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』、『竜とそばかすの姫』を筆頭にメガヒット作品は生まれてきたが、実写の日本映画に限るなら、この1年半は明らかに10〜20代の観客をメインターゲットとする作品に偏ってきた。もちろん、『マスカレード・ナイト』の客層もそこと一部かぶっているが(40代後半に入ってからも新しい世代への吸引力を維持しているところが木村拓哉のスター俳優としてすごいところ)、老若男女・全世代向けの実写の日本映画がここまでのヒットを飛ばしたのは本当に久々のことだ。

 『マスカレード・ナイト』個別の事情をもう少し突っ込むなら、今回印象的だったのは地上波での精力的なプロモーションが、局の垣根を超えて展開されていることだ。『マスカレード・ナイト』の製作委員会の筆頭として入っているのはフジテレビ。監督の鈴木雅之はフジテレビ所属で、木村拓哉とは『ロングバケーション』(1996年)の時代から仕事をしていて、劇場版『HERO』2作品の監督も務めてきた。キャスト陣も前作から続いて『HERO』でお馴染みの俳優が勢揃いしている。こんなどこからどう見ても「フジテレビ案件」の作品にもかかわらず、今回は木村拓哉だけでなく長澤まさみも作品プロモーションのために各局のバラエティ番組に出まくり。特にTBSの各バラエティ番組では「あれ? 『マスカレード・ナイト』ってTBSの映画だっけ?」と思ってしまうほど、局を挙げて大宣伝をしているかのような露出ぶりだった。「マスカレード」シリーズはテレビドラマの映画化ではないことも局を越境しやすい理由にはなってるのだろうが(例えば、最近なら『科捜研の女 -劇場版-』のプロモーションで沢口靖子がテレビ朝日系以外の地上波局のバラエティ番組に出演している姿はイメージできないだろう)、それにしても今回の製作幹事局以外の放送局での大露出は、前作公開時のプロモーションと比べてもあまりにも異例のことだ。

 近年のヒット作の数々も証明しているように、ネット時代になっても(少なくとも今のところ)依然として映画興行におけるテレビの影響力には絶大なものがあり、日本映画は公開前の段階から各作品の興行規模を「製作委員会に入っている局でガンガン宣伝される作品」「テレビスポットが打てる作品」「地上波にほとんどのらない作品」の三つに分けることができてしまう。それにしても、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のように社会現象化した上に主題歌の大ヒットもあって、結果的にNHKを含む各局の番組が公開中の作品の宣伝に加担する状況が生まれた作品はあっても、『マスカレード・ナイト』のように公開前から「どの局でもガンガン宣伝される作品」はこれまでなかった。今作に関しては木村拓哉のテレビタレントとしてのパワーも大きいのだろうが、もしこのようなことが常態化するようだったら、ますます「テレビと関係のある映画」と「テレビと関係のない映画」の格差が広がってしまうだろう。

■公開情報
『マスカレード・ナイト』
全国東宝系にて公開中
出演:木村拓哉、長澤まさみ、小日向文世、梶原善、泉澤祐希、東根作寿英、石川恋、中村アン、田中みな実、石黒賢、沢村一樹、勝村政信、木村佳乃、凰稀かなめ、麻生久美子、高岡早紀、博多華丸、鶴見辰吾、篠井英介、石橋凌、渡部篤郎
原作:東野圭吾『マスカレード・ナイト』(集英社文庫刊)
脚本:岡田道尚
監督:鈴木雅之
音楽:佐藤直紀
配給:東宝
(c)2021東野圭吾/集英社・映画「マスカレード・ナイト」製作委員会
公式サイト:https://masquerade-night.jp



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