『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』とともに映画館に「日常」が戻ってくる

映画館に「日常」が戻ってくる

 先週末の動員ランキングは、『マスカレード・ナイト』が土日2日間で動員23万9000人、興収3億4800万円をあげて2週連続で1位に。2位の『総理の夫』は初日23日(祝)からのオープニング4日間で動員9万5589人、興収1億2284万1440円なので、『マスカレード・ナイト』の強さは圧倒的。9月26日までの10日間の累計で動員133万5881人、興収18億5474万2500円を記録している。

 既報の通り、政府は19都道府県に発出中だった緊急事態宣言と8県に発出中だったまん延防止等重点措置を、9月30日をもってすべて解除することを正式決定した。東京都を例に挙げると、緊急事態宣言もまん延防止等重点措置も発出されていない「日常」が戻ってくるのは、今年の4月11日以来、実に半年ぶりのこととなる。その間ずっと、各劇場は座席の間引き販売や夜間の営業短縮などそれぞれ対応をしてきたわけだが、10月1日からはTOHOシネマズでは一部劇場のレイトショーの座席販売が再開されるなど、各所で「平常化」に向けての動きが出てきている。

 相変わらず政府の発表、及び各自治体等の要請の出るタイミングがギリギリで(感染状況を鑑みても、少なくとも今回の緊急事態宣言解除に関しては1週間くらい前には発表ができたはずだ)、その対応に追われている各劇場は気の毒な限りだが、全興連(全国興行生活衛生同業組合連合会)に加盟しているシネコン最王手のTOHOシネマズが積極的に動いていることからも、近いうちに映画館の日常は戻ってくることだろう。もっとも、少なくとも東京都では10月24日(日)まで「リバウンド防止措置」期間とされているので、いくら映画館の上映開始時間が伸びても、作品を観終わっていざ映画館を出たら周りの飲食店がほとんど開いてないという状況はもうしばらくは続きそうだ。

 緊急事態宣言もまん延防止等重点措置も発出されていない「日常」がこれまでたったの28日間しかなかった今年に入ってからも、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』、『名探偵コナン 緋色の弾丸』、『竜とそばかすの姫』、『東京リベンジャーズ』、『るろうに剣心 最終章 The Final』と興収40億円以上のヒット作はコンスタントに生まれてきた(このままのペースでいくと『マスカレード・ナイト』もそこに名を連ねることになるだろう)。しかし、その一方で外国映画のヒット作が極端に少なく(興収30億円を超えたのは『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』だけ)、大手配給の日本映画も特定の作品以外は死屍累々の状態が続いている。

 ちょうど「日常」が戻ってくる10月1日と公開日が重なった『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の興行は、そんな「コロナ以降」の興行を占う上で試金石となるだろう。コロナ禍において「日本人の外国映画離れ」は進んでしまったのか? 往年の『007』シリーズファンの年配層は映画館に戻ってくるのか? 映画関係者としてそれに加えて気になることが一つ。これもコロナ禍において進行中の事態の一つである「マスコミ試写なし」(これまでの『007』シリーズでは普通におこなわれてきた試写が、今回はおこなわれなかった)が興行成績にどのように反映されるのかについても、その経緯を見守っておきたい。

■公開情報
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
10月1日(金)全国公開
監督:キャリー・フクナガ
製作:バーバラ・ブロッコリ、マイケル・G・ウィルソン 
脚本:ニール・パーヴィス、ロバート・ウェイド、スコット・バーンズ、キャリー・フクナガ、フィービー・ウォーラー=ブリッジ
出演:ダニエル・クレイグ、レイフ・ファインズ、ナオミ・ハリス、レア・セドゥ、ベン・ウィショー、ジェフリー・ライト、アナ・デ・アルマス、ラッシャーナ・リンチ、ビリー・マグヌッセン、ラミ・マレック
主題歌:ビリー・アイリッシュ「No Time To Die」
配給:東宝東和
(c)2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.
公式Twitter:https://twitter.com/007
公式Facebook:www.facebook.com/JamesBond007

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