美波、加瀬亮、青木柚 『MINAMATA―ミナマタ―』を世界に届ける俳優たちの功績

美波、加瀬亮、青木柚『ミナマタ』俳優の功績

ユージンとカメラを通して交友関係を築くシゲル(青木柚)

 ユージンは訪れた先の熊本・水俣で、多くの水俣病患者と交流をすることになる。その中でも特別な関係を築くのが、シゲルという少年だ。彼の症状もまた非常に重いもので、会話はままならず、身体を動かすのにも大きな困難をともなう。そんなシゲルとたまたま出会ったユージンが、ヤケになりカメラを譲ってしまうことから、彼らのささやかな交流が始まるのだ。シゲルは自身に心を開いてくれたユージンに対し、同じように心を開く。言葉を介してのコミュニケーションは難しいものの、とはいえ、そもそも両者に共通言語はない。ユージンは日本語が話せず、シゲルは英語が話せないのだ。ここで交流のきっかけとなったのが、カメラである。ユージンが世界と繋がるツールであったカメラを通して、この二人も通じ合うのだ。

 このシゲルを演じているのが、青木柚。2001年生まれの超若手俳優だ。本作への出演は大大大抜擢といったところなのだろうが、主演の一人を務めた『うみべの女の子』が現在公開中であり、好評のうちに幕を閉じたドラマ『プロミス・シンデレラ』(TBS系)では出番は少ないながらも、物語のはじまりに関係するキャラクターとして顔を見せていた。 衣装やメイクの力はもちろん大きいのだろうが、演じる役ごとに青木がまったくの別人にしか見えないことに筆者はとても好感を持っている。今作『MINAMATA―ミナマタ―』の公式サイトには彼の名がメインキャストとしてはクレジットされていないのだが、文化的背景の異なる者同士の「架け橋」という役どころを担った彼の功績は大きいはずだ。

 さて、ここで述べた3名はいずれもが語り継いでいくべき演技を一つの映画作品に刻んでいる。この『MINAMATA―ミナマタ―』において、彼らの誰か一人でも欠けていれば、本作は成立していなかったかもしれない。しかしそれは、真田広之や浅野忠信らはもちろんのこと、この映画に関わったすべての者についていえることだ。そんな人々の中でも、美波、加瀬亮、青木柚は、本作を世界に届けるべく多大な貢献を果たしているのだと思うのである。

※河瀬直美の「瀬」は旧字体が正式表記

■公開情報
『MINAMATA―ミナマタ―』
全国公開中
監督:アンドリュー・レヴィタス
脚本:デヴィッド・ケスラー
出演:ジョニー・デップ、真田広之、國村隼、美波、加瀬亮、浅野忠信、岩瀬晶子、キャサリン・ジェンキンス、 ビル・ナイ
音楽:坂本龍一
提供:ニューセレクト株式会社、カルチュア・パブリッシャーズ、ロングライド
配給:ロングライド、アルバトロス・フィルム
アメリカ/115分
(c)2020 MINAMATA FILM, LLC (c)Larry Horricks
公式サイト:longride.jp/minamata/

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