“ヒロイン”から癖強キャラまで 巻き込まれ俳優の地位を確立した田中圭の躍進が止まらない
スクリーンの中で今、困った顔が一番似合うのは田中圭だ。9月23日から公開された『総理の夫』では、中谷美紀演じる野党の党首・凛子と12年連れ添う鳥類学者の日和役を演じている。電波も届かない孤島での10日間にもおよぶフィールドワークから帰ってくると、なんだか知らないが妻が総理になっていて、自分が初のファースト・ジェントルマンになっていた! そんな急展開に、田中圭が終始「えっ!?」と戸惑うような作品でもある。もうこの役は、田中圭が演じることありきで作られたといっても過言ではない。ちなみに、原作は『キネマの神様』でもお馴染みの原田マハが2013年に発表した同名小説だ。
なんだか困った田中圭ばかり目に映る。いつも巻き込まれ、戸惑い、「どうする、俺、どうする!?」とひと昔前のCMばりに焦っている気がする。しかしそういう役が、彼には本当にハマり役なのだ。
7月期ドラマ『ナイト・ドクター』(フジテレビ系)では主人公の先輩医師として基本的にクールで、感情的にはならない冷徹さをはらむ成瀬暁人役を演じていたが、そもそも田中圭がこういったキャラクターを演じることの方が最近は珍しいものになってきている。だからこそのギャップが、本ドラマでは印象的で、“頼れる田中圭像”を視聴者に植え付けた。
とはいえ、やはり彼の再ブレイクのきっかけも含め人気を支える役柄は“じゃない方”の田中圭ではないだろうか。
ブレイクまでの長い道筋
田中圭のブレイクのタイミングは、実は明白ではない。いや、明らかに『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)でのブレイクではあるのだが、そこに至るまでのキャリアが想像以上に長いから捉え方が難しいのだ。2000年からテレビドラマの端役に出演するようになった田中。その存在感は『WATER BOYS』(フジテレビ系)で山田孝之演じる主人公の親友・安田孝役で発揮されたものの、2008年の単発ドラマ『ホームレス中学生2』(フジテレビ系)までドラマの主演を務めることはなかった。しかし、その間ありとあらゆる人気ドラマに出演してきた田中圭。「えっ、これにも出てたの!?」と驚いてしまうくらい、1話単位のゲスト出演を重ねてきている。そのくらい、苦労した下積み時代を送ってきたのだ。映画に関しても、同じように有名作品の端役として多くの作品に出演している。ある意味バイプレイヤーといった文脈ではすでにブレイクしていたとも言えるのだ。なかでも、『トリビアの泉 〜素晴らしきムダ知識〜』(フジテレビ系)の確認VTRにて、いつも微笑みかけてくる謎の少年としての出演が話題になったこともあった。
しかし、世間が田中圭を強く認知したのは紛れもなく『おっさんずラブ』シリーズでのこと。彼が演じる春田の庇護欲を煽る可愛さが、人気に火をつけた。ドラマの大ヒットに準じてすでに発売されていた田中の写真集が時を経て軒並み重版となったという逸話もある。そこからさらに『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)や『恋がヘタでも生きてます』(読売テレビ・日本テレビ系)とラブコメ作品に続いて出演し、その甘いマスクで人気の幅を広げていった。