梶裕貴、『進撃の巨人』エレン役で新境地開拓 ヒーローの二面性を表現

 2010年のマンガシーンはおろか、アニメ、ゲーム、映画作品まで一大ブームを巻き起こした『進撃の巨人』。他を寄せ付けないパワーと巨躯を持った巨人とそれに抗う数多くの人間たちによる戦いを描いたダークファンタジー作品として、『別冊マガジン』にて12年もの間連載が続いた。

 結末へと向かうにつれて、読者すら予想がつかないような新展開、新要素、新設定が次々と飛び出し、最終話を迎えて数カ月経過した現在でも、多くの読者による考察がとめどなく続いている。

 そして2022年1月からは、アニメ版が『進撃の巨人 The Final Season Part2』としてスタート。アニメ版は声優たちの熱演も見どころの一つだ。そこでアニメ放送を前に、改めて出演者たちの出演作を振り返るとともに、彼らの表現の魅力について掘り下げていきたい。まずは、本作の主役、エレン・イェーガー役を務めた梶裕貴だ。

 梶は2002年に『アーツビジョン無料新人育成オーディション』に合格、17期特待生として日本ナレーション演技研究所を経てアーツビジョンに所属し、現在はヴィムスに所属している。

 高校に通いながら土日には声優としてのレッスンへと通い続け、複数のゲーム作品に出演後、2006年に『ふしぎ星の☆ふたご姫』や『桜蘭高校ホスト部』などに出演。2008年に『イナズマイレブン』で一之瀬一哉・不動明王役など、『夜桜四重奏 〜ヨザクラカルテット〜』の比泉秋名役を務めて以降、徐々に出演作品を増やしていく。

 「オーディションに受かって養成所に入っても、5年で卒業して事務所に所属することができても、全く仕事がない」「当初は、月にひとつ仕事があればいい、みたいな日々も続きました」と語っていた梶だったが、『ファイナルファンタジーXIII』、『黒執事』、『アクセル・ワールド』、『青の祓魔師』、『マギ』などのアニメやゲームのヒット作で存在感を示し、その後『進撃の巨人』でエレン・イェーガー役を演じることになる。

 それまでの彼の役どころといえば、『アクセル・ワールド』のハルユキ、『青の祓魔師』の三輪子猫丸、『デュラララ!!×2』の遊馬崎ウォーカー役など、どことなく物腰が柔らかいキャラクターを演じることが多かった。人懐っこいキャラクターとも相性の良い甘い声色は、梶の武器であり、現在の彼にも繋がるイメージになっている。

 一方で、エレンのような我の強さや気性の激しさが全面に出たキャラクターを演じる機会は少なかった。そんな梶にとって『進撃の巨人』は転機ともいえる作品だったわけだが、そこに至るまでにもう一作、重要な作品があった。それは『進撃の巨人』監督/総監督である荒木哲郎が手がけた『ギルティクラウン』(2011年)だ。

 荒木監督作で初主演を務めた梶。対人関係が苦手でナイーブな主人公・桜満集を演じ、徐々に成長していく様子を見事に表現した。しかしその後、『進撃の巨人』のオーディションを前にした梶は「同じ監督が同じ主演キャストを連続して使うというのは、イメージが固定してしまうのでは?」と悩んでいた。だが、荒木による「作品をより良いものにするために、本当に必要だと思ったら、そんな細かいことを気にして外すなんてもったいないことはしません」という言葉で一念発起。オーディションを受け、見事エレン役を勝ち取った。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アニメシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる