『おかえりモネ』“内田くん”の大変貌を体現 清水尋也、カメレオン俳優としてさらに進化

清水尋也、『おかえりモネ』で大変貌を好演

 しかし続く『ちはやふる』3部作で、そうではないことを証明する。原作でもお馴染みのドSキャラである須藤役は、“陰”と“陽”のどちらにも染まるように見えてどちらでもない。それでも強豪校を率いる重責を背負い込み、自身の決して折れないプライドの高さでなんとか折り合いをつけながら競技カルタと向き合うのである。ときには主人公たちの良きライバルとして、大きな気付きを与えてくれる。清水がこれまでの出演作で演じてきたような陰陽極端の役柄にはない複雑さを得られると同時に、確固たるイメージがつきやすいコミック原作への適性も獲得するのである。

 20代俳優の仲間入りを果たそうとしていた2019年ごろからは、10代の頃にしっかりと固めた両極を軸にして、その中間にある溝を埋めていく作業へと化す。それはやがて、清水尋也という俳優に「カメレオン俳優」のイメージを植え付けることへ繋がったといってもいいだろう。

 影を背負いつつサディスティックにしかアウトプットができない不器用な秀才を演じた『ホットギミック ガールミーツボーイ』、意識高い系の大学生を演じた『青くて痛くて脆い』。さらには『東京リベンジャーズ』での半間修二役や、完璧な“陰キャ”を声だけで体現した『映画大好きポンポさん』のように、極端な役柄をこれまでと違うアプローチで見せ
ることも事欠かない。特に清水の場合、テレビドラマよりも映画での活躍が目立つ俳優だ
けに、より認知度の高まる朝ドラへの出演というのはさらなる進化へのフックになること
は間違いない。

 どちらかといえば“陰キャ”の部類に入る“風オタク”な一面を持つ内田だが、終始朗らかな雰囲気で人を惹きつける器用な才を持ち合わせている。思わず話を聞きたくなる説得力があり、視聴者からは応援メッセージが殺到したり、明日美はテレビを見ながら「育てたい」と呟くなど、その底知れないポテンシャルはこの物語をおもしろくする“意外性”をたしかに司っている。

 以前のエピソードでも「気象予報士試験に一発合格」したという話や、「高校時代にモデルをしていた」という意外な一面が明らかになってきたわけで、第17週でもカメラの前に立つ以外はいつも通りの姿に戻っているというユニークさも見せる。あと1月半ほどの放送のなかで、「まもちゃん」と「すーちゃん」の関係も含め、さらなる意外な一面を見せてくれるのではないかと期待せずにいられない。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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