『おかえりモネ』亮が誰かを怖がらずに好きになれることを願って 百音の揺るがない“正しさ”

『おかえりモネ』亮の幸せを願って

 ドラマチックな展開が次々に繰り広げられている『おかえりモネ』(NHK総合)。前回に続き第79話では、本当の気持ちをぶつけるようなコミュニケーションが描かれる。

 みんな泣いた後は、お腹を満たしたくなるものだ。そこで築地に向かい、お腹いっぱいになってきた一行の中でふと、亮(永瀬廉)の不在に気づく百音(清原果耶)。コインランドリーに一人いる彼を見つける。その時、彼は父の新次(浅野忠信)に留守電を残していた。「船に乗らなくて悪かった。けど親父もいい加減にしろ」。息子の言葉を携帯越しに受け取った新次。「これにハンコを押したら亮を楽にしてあげられるのかな、美波(坂井真紀)にも喜ばれるよな」と、死亡届を見つめていた。

 お互いに直接の会話は避けたい親子。亮の方は百音に声をかけられ、少し2人だけの時間を共有する。言葉を交わさず、しばらく見つめ合うと何かを避けるかのように百音は「行こう」と出ていこうとする。しかし、その腕は亮によって掴み止められた。変なことを言ってごめん、と謝る彼に喫茶での出来事を思い出し「変なことじゃないよ。話したいなら聞くから」と返す百音。しかし、亮は手の力を緩めることなく「違う、そういう意味じゃない」と言った。

 確か第66話でも、同じこのコインランドリーで菅波(坂口健太郎)が百音に同じ言葉をかけた。自分が相手を思う故に感情的になり、冷静な判断を下さなかった故にホルン演奏者の元患者の未来を奪ったことを告白した時だった。一緒になって涙を滲ませて背中をさすり、手当てする百音は「大丈夫です」と言われて、手を離す。しかし、菅波はすぐに「違う、そういう意味(拒絶)じゃない」と彼女の目を見て伝えた。

 まるで対比のように菅波と亮の言葉が映し出されているシーン。亮は「わかっているでしょ」と切ない顔でさらに百音に近づく。百音の表情は固いものの、真摯に亮に向き合い、目を見て「なんでもするって思ってきたよ、りょーちんの痛みがちょっとでも消えるなら。でも、これは違う」とハッキリ言った。亮はその言葉にひどく痛ましい表情を浮かべ、さらに「それでも良い」と迫る。しかし、百音は揺るがず「これで、救われる?」と答えた。

 核心をつかれた亮は「ごめん」と距離を置くと、自分が誰も好きになりたくない、なるのが怖い理由を吐露する。「だって怖いじゃん。死ぬほど好きで大事なやつがいるとか。その人が目の前から消えるとか、自分が全部ぶっ壊れる。そんなの怖ええよ」と涙を流して話す。彼が思い浮かべていたのは亡き母のことだった。百音も、それを察したことだろう。

 のちに、未知は百音の亮に対する答えが「正しいけど冷たい」と再び姉を責める。しかし、百音の選択は決して冷たくないのだ。あの答えこそ、正しいだけでなく最も誠実で優しいと感じる。同情だけで傷ついた相手を受け入れてしまうと、その人の抱えている問題は消えないままだし、何よりその問題を本人が解決しようとする気概も失いかけない。「この人がいれば、それで良い」となって、抱えた傷を見て見ぬ振りしてしまうかもしれない。未来を見据えると、ここで百音が亮に断ったことは亮にとっても、そして未知を含むその場にいない共通の人たちにとっても最良の決断なのである。

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