『ラブライブ!』3作目で描いたスクールアイドル像 賛否生まれた『ニジガク』を解説

 『ラブライブ!』2作は部活動とスポ根を描きつづけてきた作品であり、それが共感を得るポイントになっていたが、この作風はおおよそこれまでのファンの多くを戸惑わせた。「グループとして活動しない」「全国大会も目指さない」なんてアリなのか? と。端的に言おう、アリだと筆者は考えている。

 幾分かリアリティのある視線を投げかけてみよう。中高で部活動をしていた/している人の中には、日々の練習や休日返上で部活動に打ち込んでいても、大会結果も中途半端のままで終わってしまい、苦い経験を送った方が大部分だろうと思う。筆者もそのうちのひとりだ。

 だが同時に、そういった経験を通して「より好きになれた」という人もいるだろう。勝敗にこだわることなく触れ合い続け、遊戯としてのスポーツや文化活動としてのアート性を親しみ、楽しんでいくという姿勢は決してバカにしてはいけない。

 では果たして、「スクールアイドル≒音楽」にコンテスト的な採点は必要なのだろうか? その俎上にあがることだけが少女らの「夢」「目標」であっていいのか? アニメ版『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』が問いかけてきたのは、まさにこの点に他ならない。部活動とスポ根というテーマ性が押し出されていたことへの、メタ的なアンサーとして刺さっていく。

 加えてみれば、音楽は芸術採点ではなく、あくまで芸術表現、そういった点においても解答してくれた作品だといえる。過去2作品でのスポーツや運動部的な目線を後退させ、本作品は文化部のように活動をするスクールアイドルを描いたのだ。

 各々が自分の活動に必要な作業をすべて担当し、メンバーごとの得意・不得意をカバーするように他のメンバーが動くこともある。グループの活動としては描かれなくなったものの、ソリストとして真剣に活動をする者に対し、周囲にいる8名や主人公キャラの高咲侑を含めてフォローは欠かさない。部活というほどの連帯性は強くないが、ピンチとあればサポートしあい、互いに刺激し合いながら活動していくというのは、まさに「同じものが好きな人が集まる会」という色合いが強く出ている。学校活動における部活動/同好会のリアリティが、別の角度から差し込まれているのだ。

 そんなニジガクであるが、当初はアニメ作品になる予定がなかったことは有名である。つまり、当初の想定をはるかに越えるレスポンスや人気をうけてアニメ化へと踏み切ったということであり、ファンからの期待も相応に熱かったのはいうまでもない。

 アニメ1期の放映後、『スクフェスALL STAR』内には三船栞子ら新しいキャラクターが登場し、その後のシナリオとともに賛否両論となった。ゲームというコンテンツを活かし、ニジガク個々人の考えや視点がキッチリと描かれていることで、本作の魅力へと十二分に昇華されている証拠とも言えよう。2022年にはアニメ2期の制作が決定しているが、次回はゲームに合わせたストーリーになるのだろうか、それともまた別のオリジナルなストーリーになるのか、いまからでも楽しみである。

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