『おかえりモネ』浅野忠信×内野聖陽、朝らしからぬ濃厚な芝居 亮にもキラキラした笑顔が

『おかえりモネ』浅野×内野の濃厚な芝居

 2016年8月24日。東北の太平洋側から大型の台風が上陸しようとしていた。観測史上初。「あさキラッ」では予定を変更し台風情報をトップで伝え、地元・宮城を心配する百音(清原果耶)の意見を取り入れた朝岡(西島秀俊)は高潮への警戒を具体的に説明する。そのいつにない緊張感は百音からサヤカ(夏木マリ)を通じて登米の森林組合に、永浦家から気仙沼の漁協へと広がっていた。

 『おかえりモネ』(NHK総合)第57話では、宮城の懐かしい面々が再登場した。先述したサヤカだけでなく、亮(永瀬廉)と新次(浅野忠信)にも台風上陸の知らせは伝わっていた。「銀行だよ……」と龍己(藤竜也)に嘘をつき、新次たちが住む本土の仮設住宅に向かった耕治(内野聖陽)。島に戻れないのを覚悟でやってきた目的は、湾内に島の船を避難させている龍己の手伝いをしてほしいということ。「係留しとけば大丈夫だろ」と一蹴する新次に、耕治は「高潮で堤防に叩きつけられっかもしんねぇ。おめぇなら、まだギリギリ動かせる」と必死に食い下がる。

 震災から5年5カ月。永浦家もようやく牡蠣養殖により生計を立て直してきたが、再び船をやられてはつらい。原盤を揚げに一人で海に向かった龍己が、いかだの上で足を捻ったこともあった。ここは腕のある漁師の力が必要だと耕治は考えたのだ。空気を察した亮が自ら名乗り出るが、本土の船の船員として、島に行って戻れなくなっては困る。

 もちろん、耕治の本当の目的は、新次をもう一度船に乗せるというところにあった。震災で自分の船と妻・美波(坂井真紀)を失った新次。耕治ができることは新次から逃げずに、また前を向く1日目を始めようと言い続けることだった。きっと、その思いは新次が一番分かっている。耕治が部屋の隅に見つけたのは、接近してくる台風の状況を示した天気図。それはいまだ消えずにいる漁師としての意地と魂である。

 「船やられんの黙って見てらんねぇのはおめぇの方だろ」という耕治の殺し文句が新次へと決まった。カッパを着て海に向かう新次を、固唾を飲んで見つめる耕治と亮。嬉しそうな耕治の声とキラキラとした笑みを浮かべる亮の表情が、前を向く1日目を新次が歩み始めたことを伝えていた。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「リキャップ」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる