“新興”ディズニープラス、『ワンダヴィジョン』で初受賞なるか エミー賞最大の激戦区予想

エミー賞、Disney+が初受賞なるか

 現時点で日本配信の予定がないBBC、HBOの合作『I May Destroy You(原題)』は9ノミネートを獲得。主人公アラベラはある日、前夜に何があったかを思い出すことができず、やがてこれまでの人生、友人、家族、キャリア、恋愛について想いを馳せていくことになる。主演を務めるミカエラ・コールが自身のレイプ被害の実体験を基に脚本を執筆。主演女優賞、脚本賞、監督賞、そしてエクゼクティブプロデューサーとして作品賞にノミネートされた。これだけ作品が氾濫する今日において、性的同意を巡る黒人クリエイターの傑作がここ日本で見られない事態は何とかならないものか。ケイト・ウィンスレット、エリザベス・オルセン、アニャ・テイラー=ジョイらが競う主演女優賞部門でコールはダークホースとなるだろう。

I May Destroy You | Official Trailer | HBO

 作品賞候補からは漏れたものの、合計12ノミネートを獲得して存在感を放つのがDisney+で配信中の『ハミルトン』だ。リン=マニュエル・ミランダによる大ヒットミュージカルを配信用に撮影、編集したもので、演技4部門中合計7名がノミネートされていることからもその根強い人気ぶりがうかがえる。既にトニー賞も受賞している演劇作品をTV作品として評価することにはいささか疑問だが、これも大ヒット作が名を連ねる今年のエミー賞らしい傾向と言えるだろう。

 最後に主演男優賞に触れておこう。『ハミルトン』からミランダとレスリー・オドム・Jr.、新境地開拓となった『フレイザー家の秘密』のヒュー・グラント、『フランクおじさん』でノミネートされるべきだった『ワンダヴィジョン』のポール・ベタニーらが並ぶ中、『HALSTON/ホルストン』のユアン・マクレガーを推したい。近年、バイプレーヤーとして磨きのかかる彼が、この作品では70年代に活躍したファッションデザイナーのホルストンに扮し、すこぶる格好いいのだ。キャリアベストが映画ではなくTVシリーズから出てくるのもPeakTVならではである。

『HALSTON/ホルストン』ユアン・マクレガー

 海外ドラマは追いかけるのが大変という人も、この1シーズン限定のリミテッドシリーズなら手を出しやすいのではないだろうか。ここで紹介している作品を観るだけでも十分にトレンドを押さえられる傑作ばかりである。この機会にぜひ観てもらいたい。

■配信情報
ディズニープラスオリジナルドラマシリーズ『ワンダヴィジョン』
ディズニープラスにて配信中
監督:マット・シャックマン
脚本:ジャック・シェイファー
出演:エリザベス・オルセン、ポール・ベタニー
原題:WandaVision
(c)2021 Marvel

『クイーンズ・ギャンビット』
Netflixにて独占配信中
PHIL BRAY/NETFLIX (c)2020

『メア・オブ・イーストタウン/ある殺人事件の真実』
U-NEXTにて独占配信中
(c)2021 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R) and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.

『地下鉄道 ~自由への旅路~』
Amazon Prime Videoにて独占配信中
出演:スソ・ムベドゥ、チェイス・W・ディロン、ジョエル・エドガートンほか
監督・製作:バリー・ジェンキンス
エグゼクティブプロデューサー:バリー・ジェンキンス、アデル・ロマンスキー、マーク・セリャク、デデ・ガードナー、ジェレミー・クライナー、ブラッド・ピット、リチャード・ヘウス、ジャクリーン・ホイト、コルソン・ホワイトヘッド

『HALSTON/ホルストン』
Netflixにて独占配信中

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