『おかえりモネ』は“初恋実らないセオリー”を覆すか 強烈な菅波の「ド新人の空回り」

『おかえりモネ』菅波の「ド新人の空回り」

(1)念願の仕事に就くことができたが故に何としてでも成果を上げたいと不必要に意気込んでいる。いわゆる、ド新人の空回り。
(2)誰かが危険な目に遭うことを怖がり過ぎている。
(3)気仙沼での震災の経験が百音自身を追い詰めているように見える。自分の背負ってきたものを仕事と直結させると大抵ドツボにはまる。

A.もう少し自分を緩めてあげてもいいのではないか。

 “菅波診療所”とでも名付けたいほどに、直球でありながらも百音の心情に寄り添った優しげな分析である。そんな菅波の話を聞き、百音は「自分のせいで誰かに何かあったらって怖かっただけなんだと思います」と霧が晴れたように「大丈夫」と自身に言い聞かせる。

 この第11週で潜在的に忍ばせられているのが「距離」というテーマである。「恋愛は距離だよ。そばにいることが一番大事なの」と言っていたのは恋愛は百音の先輩にあたる明日美(恒松祐里)。地元で同じ海に関わる立場にいる亮(永瀬廉)と未知(蒔田彩珠)はお似合いの関係であり、百音は互いに「一緒にいることで気持ちが楽に」なる2人という見方でいた。

 4カ月間を経ても「私、先生とは距離が空いたとは思いません」と話す百音にとっては、菅波が一緒にいることで気持ちが楽になる相手になる。その証拠にあれだけ塞ぎ込んでいたのにも関わらず、思わず菅波が指摘するほど、めちゃくちゃ元気に。「私、先生にずっと会いたか……」と百音の思いが溢れるが、「ピーピー」と洗濯機のアラームが鳴り、11分の菅波診療所は終了。気まずい空気となかなか視線が合わせられない百音と菅波。しかし、そこには悩みから抜け出した真っ直ぐな目の百音がいた。

 しかし、『おちょやん』『エール』『スカーレット』……と主人公の初恋が実らないのは朝ドラの悲しきセオリーにあるが、そのセオリーを覆すのは確実にあり、折り返し目前というこのタイミングでも初恋どころか百音が自分の気持ちにまだ気づいていないのは『おかえりモネ』がある種、革新的な朝ドラと言える点であろう。

 第12週「あなたのおかげで」では、新たに車いすマラソン選手の鮫島(菅原小春)が登場。朝岡は東北の太平洋側から台風が上陸する予報図を見つめていた。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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