【ネタバレあり】『ロキ』衝撃の最終話は何を意味する? 今後のMCUの展開を大予想

『ロキ』衝撃の最終話が意味すること

ジョナサン・メジャース(写真:REX/アフロ)

 その黒幕を演じていたのが、ジョナサン・メジャースだったということです。最近だとドラマ『ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路』で有名な俳優さんですが、実は彼は2023年2月17日全米公開予定の、映画『アントマン&ワスプ:クアントゥマニア(原題)』のヴィランである“征服者カーン”を演じるとアナウンスされています。なので『ロキ』の最終回でジョナサン・メジャースが黒幕役で登場した、ということはこのドラマのメインヴィランは“征服者カーン”だったということです。そしてマーベル・コミックにおいては“征服者カーン”はアントマンとワスプの敵というよりはアベンジャーズの強敵の一人でもあり(もともとアベンジャーズのコミックでデビュー)、また今後MCU版が作られるとされる『ファンタスティック・フォー』にも大きく関わるキャラです。フェイズ4以降においてサノス級のビッグヴィランになる可能性もある。その大物が突然現れたのでMCUファンはビックリしたわけです。

 しかし、ここで注意しておきたいのは、先ほど話を分かりやすくするために「ジョナサン・メジャース演じる“征服者カーン”がもう登場した」的に書いたのですが、それはちょっと“はしょりすぎ”でした。そもそもフェーズ4のそんなに重要なヴィランなら、あっさり殺されてしまうのはおかしいだろうと思われるかもしれない。

 その通りなんです。ここでまず“征服者カーン”というのはどういうキャラなのか説明すると、コミックの設定では、彼は30世紀の未来人です。そしてタイムトラベルで現在・過去・未来を旅し、古代エジプト時代から40世紀の未来を行き来します。(コミックではカーンが古代エジプトに介入したことがきっかけで、X-MENの強敵アポカリプスが生まれた、という設定もあります)そして40世紀の未来を征服した後、今度は僕らがいる今の時代を支配しようとまた過去にやってくる。そこでアベンジャーズと戦うわけです。そしてタイムトラベルの途中で、いろいろ事件を起こすから、様々なマルチバースが生まれ様々なバージョンのカーンが登場。

 ちなみにカーンの本名はナサニエル・リチャーズといい、これまたややこしいんですが20世紀の世界から30世紀の世界に移り住んだ、ファンタスティック・フォーのリーダー、リード・リチャーズの父親の名を借りてそう名乗っているのです。このドラマ版ではジョナサン・メジャース演じる黒幕の正体は、やはり30世紀の未来人だが、マルチバースの存在に気づいた天才学者。そして様々なマルチバースにいる“自分”と会っていたが、中には野心的ですべてのマルチバースを支配しようとする危険なバージョンの“自分”もいる。そういう奴が現れないように時間軸をずっと見張っていたと説明されます。そして自分がもし死ねば、それがマルチバースに影響を与え、危険なバージョンの“自分”が出てくるだろうと。

 この最終回でシルヴィに殺されてしまうわけですから、危険版の“自分”が出てくるお膳だては整いました。恐らく、その危険版が『アントマン&ワスプ:クアントゥマニア』から登場する“征服者カーン”なのだと思います。この『ロキ』の最終話のジョナサン・メジャースはTVAの黒幕であった未来人をよくしゃべる陽気なキャラ的に演じていますが、きっとこれから出てくる危険版はもっと邪悪なのでしょう。その違いを効果的に現すために、今回軽めのキャラにしているかもしれません。コミックでは仮面とマントを付けたいかにもスーパーヴィランのようであり、次に“征服者カーン”として登場する時は、この姿かもしれませんね。フェーズ3までのメインヴィランはサノスですが、ロキもまたフェーズ1からMCUを牽引する重要ヴィランでした。そのロキがこれからのメインヴィランを見出すという構成も面白いですね。

 今までMCUは映画と映画をつなげてきましたが、これからはドラマと映画の結びつきがより強くなっていく。それを象徴するジョナサン・メジャースのMCUデビューでした。

■杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか)
アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画に関するコラム等を『スクリーン』誌、『DVD&動画配信でーた』誌、劇場パンフレット等で担当。サンディエゴ・コミコンにも毎夏参加。現地から日本のニュース・サイトへのレポートも手掛ける。東京コミコンにてスタン・リーが登壇したスパイダーマンのステージのMCもつとめた。エマ・ストーンに「あなた日本のスパイダーマンね」と言われたことが自慢。現在発売中の「アメコミ・フロント・ライン」の執筆にも参加。Twitter

■配信情報
ディズニープラス オリジナルドラマシリーズ『ロキ』
ディズニープラスにて独占配信中
監督:ケイト・ヘロン
出演:トム・ヒドルストン、オーウェン・ウィルソン、ググ・バサ=ロー、ウンミ・モサク
(c)2021 Marvel
公式サイト:https://disneyplus.disney.co.jp/program/loki.html

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「海外ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる