ただの財閥ドラマでない アップデートされた韓国ドラマ『Mine』の注目ポイントを解説
血まみれの床に転がっているのは死体なのだろうか。目撃者のシスターは「殺人事件が起きた」と言っている。どうやらヒョウォン財閥一家の中で起きた事件のようだ。果たしてこれが悲劇の始まりなのか、終わりなのか……冒頭から謎を残して始まったNetflix配信中の『Mine』。
人気が冷めやまない『ヴィンチェンツォ』に続き、Netflix視聴回数ランキングに食い込んできた韓国ドラマ勢のひとつ。現地でも6〜9%台(11話までの放送時点)の高視聴率をマークしている。かつて韓国ドラマを賑わせていた“財閥ドラマ”の後継者争い、裏切り、立場が違う恋愛といった定番の要素は残しつつ、アップデートされた財閥のスケールと“偏見にまみれた世の中”に“知性・強さ・覚悟”を持って立ち向かう彼女たちに目を逸らすことができない。そんな本作の見どころを紹介していく。
華やかさと飢えが両立する財閥の世界
芸術と自然を愛するヒョウォン家の大豪邸は、本家「カデンツァ」と分家「ルバート」を構え、まるでヨーロッパにある敷地のよう。さらに、彼らの身に纏うものや取り囲むものすべてが、きらびやかで美しく視界を満足させてくれる。一般の生活は当たり前に存在せず、そこにある空気と水が同じであることさえ許されない。そんな徹底された“別世界”を観ているだけでも興味深い。そして、華やかさと隣り合わせなのが欲望である。ヒョウォン家で働く使用人は、彼らのことを「かわいそうな人たち」と言い、その理由が「満足を知らないから飢えていく」とも言う。この“華やかさ”と“飢え”の両面を描くことで、ドラマを一層奥深いものにしている。
また、財閥一家は血縁関係が複雑だ。後継者争いをする兄弟の次男は、会長の婚外子で、物語の中心となる長男の妻チョン・ソヒョン(キム・ソヒョン)と次男の妻ソ・ヒス(イ・ボヨン)は、それぞれ子どもがいるが継母である。その複雑な関係が、ヒョウォン一家を「破滅」へと導いてしまうことになるとは……。
豪華すぎるキャストたちの魅力
次男の妻ヒスを演じるのはイ・ボヨン。変わらない美しさはもちろんのこと、品のよさと見え隠れする可憐さが魅力で、イ・ボヨンの主演作を心待ちにしていた韓国ドラマファンも多かったことだろう。『君の声が聞こえる』(2013年)では、共演したイ・ジョンソクとの年下×年上カップルが注目を集め、日本ドラマ『Mother』のリメイク版『マザー 〜無償の愛〜』(2018年)では、虐待されている女児を守るため、誘拐して育てようとする鳥類研究者と言う難しい役を熱演した。今回演じるヒスは真っ直ぐな性格で、血の繋がらない息子を自分の子のように育てる愛情深い面は彼女らしい役柄だ。
『SKYキャッスル〜上級者の妻たち〜』(2018年)で入試コーディネーターのキム・ジュヨンを演じ、圧倒的な存在感をみせたキム・ソヒョン。本作では、ヒョウォン家の長男の妻であり、自身も財閥出身で生まれながらに品位と知性が備わっている上流層の人間。ヒョウォン財閥の裏のドンとも言える存在で、一家で起きる問題をコントロールしている。自分の感情を出すことはないが、胸に秘めている思いがあり、義妹であるヒスのことも全面的に支えるようになる。
ヒスの息子、ハジュンの家庭教師カン・ジャギョン役を務めるのは、オク・ジャヨン。記憶に新しいのは『悪霊狩猟団:カウンターズ』(2020年)で悪霊に取り憑かれた恐ろしい表情の印象が残るが、今回は綺麗な家庭教師のお姉さん。ところが、ただの家庭教師ではなく、彼女がヒョウォン家に来たことでとんでもない展開に。「『SKYキャッスル〜上級者の妻たち〜』の家庭教師キム先生が『Mine』の家庭教師カン先生に仕返しされる!?」と、甘い期待をした筆者の想像を越えてきた。
ちなみに、ヒスの息子のハン・ハジュンは、アカデミー賞4冠を達成した韓国映画『パラサイト 半地下の家族』(2019年)のパク家のお坊っちゃま役で顔が知られた、有名子役のチョン・ヒョンジュン。そして、ソヒョンの息子のハン・スヒョクは、男性アイドルグループVIXXのエンことチャ・ハギョン。ヒョウォン財閥の次の跡取り候補は、顔の完成度の高さがポイントとも言えよう。