浅野忠信×内野聖陽、『おかえりモネ』で放つ存在感 これまでと異なる朝ドラの父親に

朝ドラにおける父親の存在

 百音(清原果耶)がお盆休みに帰省したことで、なぜ父親の耕治(内野聖陽)が百音を島に連れ戻そうとしたのか、百音の妹・未知(蒔田彩珠)が真剣に種ガキの研究に取り組む理由や家族がそれぞれに互いを気遣うゆえに抱えている問題が明らかになった『おかえりモネ』(NHK総合)第4週。

 爽やかで朝の放送にふさわしい映像美が魅力の本作ではあるが、近年の朝ドラでは珍しく現代が舞台になっていることと、ヒロインとその父親が穏やかで似ているというのも、朝ドラの王道から外れているように思われる。『おちょやん』の千代(杉咲花)とテルヲ(トータス松本)の壮絶な別れのシーンは記憶に新しいが、借金を作っては千代に迷惑をかけるテルヲは朝ドラ史上最低の父親と呼ばれても納得のダメ親父ぶりを発揮。憎めないところがあるとはいえ、千代を苦しめる存在だったことは間違いない。

 『スカーレット』の喜美子(戸田恵梨香)と常治(北村一輝)の関係にしても、貧乏なのに酒飲みでダメな父親をしっかり者の娘が時には対立し、その才能で超えていく物語になっていた。

 また、昭和の音楽史を代表する作曲家・古関裕而と、その妻で歌手として活躍した古関金子をモチーフに描いた『エール』の主人公、裕一(窪田正孝)の父の三郎(唐沢寿明)も商才がなく、頼りない存在だった。

 大正、昭和など激動の時代に夢を持ち、才能を生かすために波乱万丈な人生を強く生き抜く朝ドラの主人公にとって、ダメな父親は理不尽な社会の象徴であって、そこを乗り越えないと未来が描けない。選択肢を選ぶ余裕がなかった彼女たちは、前に進みながら自分の道を作っていくしかなかったのだ。

 現代を生きる本作のヒロイン・百音の場合は、未来に続く道をどう選べばいいのか、どうすれば誰かの役に立てるのかを考えあぐねていた。感受性豊かで本来は耕治に似て明るく、おおらかな百音はたとえ家族であっても軽はずみな言動で傷つけることはない。百音も耕治も強い口調で一方的に相手に責められることがあっても、自分の中で受け止めてしまうのだ。

 そのおかげで、喧嘩をしてもすぐに仲直りできる穏やかな永浦家。強烈なダメ親父の登場は『おちょやん』で一区切りか……と思われたが、見逃せない存在がいることに気づかされた。未知の憧れの人であり、百音の同級生でもある亮(永瀬廉)の父、凄腕漁師だった新次(浅野忠信)だ。

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