西島秀俊の声が朝の癒やしに 『おかえりモネ』清原果耶を導く朝岡の多面的な魅力

『おかえりモネ』西島秀俊が朝からの癒やしに

 『おかえりモネ』(NHK総合)は、未来を予測できる「気象予報士」を目指すヒロイン・百音(清原果耶)の物語。第2話のラストから、百音を気象予報士へと導くことになる気象キャスター・朝岡覚(西島秀俊)が登場した。

 西島秀俊演じる朝岡はテレビで活躍する大人気の気象予報士。百音が働く森林組合が企画した石ノ森章太郎の特別原画展を見ようと登米を訪れ、同じく組合が企画している「森林セラピー」にも興味を持った。「森林セラピー」では、百音と一緒にラフターヨガでリラックスし、ハイキングコースを歩いている際、遠く離れたカフェの話し声が聞こえるという百音に、朝岡は「雨が降るかもしれない」と教えた。雨が降る前は、低気圧が接近して上空の温度が高くなるため、音が遠くまで聞こえやすくなるという。

 虹や彩雲がいつ、どこで見られるのかという予測もうれしいが、天気の急変を分かりやすく解説してくれる飾らない人柄も、彼の周りにいつも人が集まる理由の一つなのだろう。毎年恒例の行事である登米能が雨で中止か、と組合の職員たちが動き出したときも「この雨は、あと2時間でやんだりしませんか?」と百音が尋ねると、天気図やレーダーで雨雲の動きを確認して「この雨は午後4時にはやむと予測します」と周囲の人に解説しながら朝岡は慎重に予測していた。無事に能は決行され、組合の職員や町の人は大喜びで、百音も目を輝かせた。

 ベテランの気象予報士である朝岡に期待されるのは、何よりも正確な判断力だといえる。広い視点というよりも、百音を驚かせるように未来を予言するような神の目線を持つパーフェクトな存在である。とはいえ、朝岡は近寄りがたく、AIのような面白みのない人間ではまったくない。面倒見のよさや親しみやすさ、じつは石ノ森章太郎の作品の大ファンでグッズを買いこんではしゃぐところなど、多面的な魅力を次々と見せた。

 特に印象的だったのが第5話だ。朝岡が東京に帰る日の早朝、北上川の移流霧を見に行くシーン。幻想的な霧に包まれた景色に目を見張っていた百音は、朝日を眺めているうちに表情を変えた。

「私の地元、気仙沼の海にも冬になっと、けあらしっていう霧が出るんです。これとすごく似た風景が港に広がるんです。私……そのけあらしを見るのが小さいときからとても好きで、海から昇る朝日もとても好きで。でも、あの日……。私……何もできなかった」

 静かに涙を流す百音に朝岡は「霧はいつか晴れます」とだけ言った。霧がずっと続くわけではなく、時間がたてば晴れ間がのぞくのは本当のこと。落ち着いた説得力のある西島秀俊の声が優しく響く。

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