西島秀俊の声が朝の癒やしに 『おかえりモネ』清原果耶を導く朝岡の多面的な魅力

『おかえりモネ』西島秀俊が朝からの癒やしに

 第3話で百音の実家が気仙沼で牡蠣の養殖業を営むと聞いた朝岡が「それじゃあ、3年前は大変だったでしょう」と尋ねると「まぁ」と百音の表情が曇ったが、2011年3月11日に島を離れていたことで「自分は何もできなかった」という後ろめたさを彼女は抱えてきたのだった。「誰かの役に立ちたい」という言葉を百音は口にするが、明るく素直な百音はあの日から心に霧がかかったような無力感に包まれて身動きがとれずにいたのだ。自分に何ができるのか、その答えを見つけようとする百音が空を見上げ、前を向くきっかけとなったのが朝岡との出会いだった。

 百音が朝岡に彩雲の写真を見せ、「この雲は見るといいことがあると聞きました。本当ですか?」と聞くと、朝岡は「迷信でしょう」と意外なほどサラリと答えた。百音の表情を伺い「がっかりさせてしまったらすみません」と謝ったうえで、「でも、空を見て雲がきれいだと思えている時点でその人は前向きになれていると僕は思います。だとしたら、それは良いことが起きる前兆といってもいいんじゃないでしょうか」と言う朝岡。

 もう一度彩雲が見たいという百音に「10分後、外に出てこの方向、風車を見てください」と予測し、「もしも外れたら電話をください。謝ります」と名刺を渡して「またいつか」と、朝岡は立ち去った。誠実で、余計なことは言わない、その姿勢も理想的。感受性豊かで、音にはとくに敏感な百音だから、朝岡の言葉は何よりも力強く感じたに違いない。

 朝岡の言うとおり、10分後に風車の方向には鮮やかな彩雲が見え、百音は霧が晴れたような笑顔で空を見上げる。百音の物語は始まったばかり。希望が感じられる未来へと導いてくれる朝岡の存在があるから、百音の世界はこの先どんどん広がっていくのだろう。

 西島秀俊は『おかえりモネ』の脚本・安達奈緒子が手がけた『きのう何食べた?』(テレビ東京ほか)にも出演している。西島が『きのう何食べた?』で演じたシロさんこと筧史朗は大の料理好き。毎話ごとに印象的な料理シーンが織り込まれ、ここでは西島がナレーションの形でレシピを解説してくれていたのだが、とにかくその声がいいのだ。

 本作でもその落ち着いた声は、百音たちにとって、そして視聴者である私たちにとって、大きな癒やしになっている。百音と朝岡が本格的につながるのはしばらく先になりそうだが、今から西島秀俊の再登場が待ち遠しい。

■池沢奈々見
恋愛ライター。コラムニスト。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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