『ゾンビランドサガ』アイドルアニメの奥深さを証明 異色でありながら王道なストーリーに

 それは2期である『ゾンビランドサガ リベンジ』にも受け継がれている。華々しいラストを飾った1期ののち、興行の大失敗をしてしまい巨額の借金を抱えて、自暴自棄になるフランシュシュのプロデューサー、巽幸太郎。やり方はどうあれ、いつも全力でフランシュシュのメンバーを輝かせるために奮闘してきた幸太郎を知るさくらは、なんとか再起させようと応援する姿から始まる。これは1期のテレビアニメとは逆の構図となっており、それまで応援してくれた人の苦境時に、応援をしてあげるというアイドルの姿を見せてくれた。

 そしてアイドル作品で重要なのは楽曲だろう。本シリーズは様々な楽曲が楽しめるが、90年代から2000年代をイメージした作品も多い。一部の楽曲からはSPEEDやモーニング娘。などを連想する人もいるのではないだろうか。

 本作の楽曲の挑戦は多岐にわたる。先にも述べたようなラップから、氣志團などのヤンキーを思わせるロック、アップテンポジャズ、スキャットなど、多くの種類の楽曲や歌唱法を取り揃えている。それらの楽曲はキャラクターの個性にもつながるほか、『ゾンビランドサガ リベンジ』の第4話のように、バンド編成のロック音楽とすることで、大きな盛り上がりを見せることもできた。

 特に2期において顕著だが、これらの”アイドルらしい楽曲を”というような1つのジャンルに固執することなく、そのジャンルの壁を取り払うことによって、フランシュシュのメンバーの人気が多くの人々に波及されていく描写が印象に残る。楽曲の多様性がキャラクターの多様性となり、それが応援する世代や人々の多様さにつながっていく。

 一般の女子高生、伝説の元トップアイドル、元暴走族のトップ、元天才子役、元人気花魁、そして伝説の山田たえ。それぞれの時代の芸能界などで輝いたものの、若くして亡くなって、なおゾンビとして復活し、再び人々を応援するために舞台に立つ姿。それを見てフランシュシュを応援のお返しをする観客の気持ちは、画面を超えて視聴者にも伝わるだろう。ゾンビがアイドル、これも王道。アイドルアニメ文化の奥深さを証明する作品だ。

■井中カエル
ブロガー・ライター。映画・アニメを中心に論じるブログ「物語る亀」を運営中。
@monogatarukame

■放送情報
TVアニメ『ゾンビランドサガ リベンジ』
TOKYO MXほかにて毎週木曜日深夜放送
原作: 広報広聴課ゾンビ係
監督: 境宗久
シリーズ構成: 村越繋
キャラクターデザイン: 深川可純
音楽: 高梨 康治・Funta7
主題歌・挿入歌: SCOOP MUSIC
音楽制作: エイベックス・ピクチャーズ
音響監督: 境 宗久
音響制作: dugout
制作: MAPPA
(c)ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会
公式サイト:zombielandsaga.com
Twitter:https://twitter.com/zombielandsaga

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