松たか子と松田龍平、緊張感のある会話劇 『大豆田とわ子と三人の元夫』は不穏な展開へ

松たか子と松田龍平、緊張感のある会話劇

 今回は「靴下」がそれで、わかりにくい「点」が少しずつ繋がって「線」になる瞬間にこそ、このドラマの醍醐味はあると言えるだろう。

 同時に「そう来たか」と驚いたのが、門谷の正体が分かる場面だ。当初は自分も三回離婚しているため、同じ境遇のとわ子に好意を持ったのかと思われた門谷だが、次第に彼が女性を見下しており、男の離婚は勲章だが、女の離婚は傷だと考えていることがわかる。門谷はとわ子を「かわいそう」「お守りしたい」と言って自分の価値観を押し付けてくる。それだけなら、残念な男だと思って縁を切ればいいのだが、相手はとわ子の会社の契約先の社長である。

 門谷の会社は、しろくまハウジングが要請した追加予算を認めず、現在の予算で仕事を進めなければ契約を破棄すると圧力をかけてくる。

 とわ子は門谷と話すために直接合いに行き、彼の車に乗り込む。その後、流れるのはとわ子に誕生日メッセージを贈ろうと動画を撮影している夫たちの呑気な姿で、ラストカットに毎回登場するとわ子の姿も今回はないため、最終的に彼女がどうなったかわからないまま、次回に続く。

 これまでにも、とわ子の女社長としての悩みは描かれていたが、『問題のあるレストラン』(フジテレビ系)などで描かれてきた男社会における女性差別というテーマが一気に浮上したことに驚かされた。

 一方で、弁護士の中村慎森(岡田将生)の依頼人だった謎の女・小谷翼(石橋菜津美)が、彼が暮らすホテルの従業員だったことがわかる。

 2年もホテルで暮らしながら、彼女のことを認識していなかった慎森に「覚えてなかった? 見てなかった? ふ~ん、誰が掃除してるかなんて関心なかったか」と言う場面も、格差社会の残酷さを燻り出した恐い場面である。

 ナレーションでも語られたが、節々に恐い場面が挟まる第5話は、ラブコメが突然「ホラー映画」に切り替わったかのような超展開だった。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
『大豆田とわ子と三人の元夫』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:松たか子、岡田将生、角田晃広(東京03)、松田龍平、市川実日子、高橋メアリージュン、弓削智久、平埜生成、穂志もえか、楽駆、豊嶋花、石橋静河、石橋菜津美、瀧内公美、近藤芳正、岩松了ほか
脚本:坂元裕二
演出:中江和仁、池田千尋、瀧悠輔
プロデュース:佐野亜裕美
音楽:坂東祐大
制作協力:カズモ
制作著作:カンテレ
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/mameo/
公式Twitter:@omamedatowako

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる