今期ドラマはサプライズ満載! 『着飾る恋』『まめ夫』『コントが始まる』などの“仕掛け”
放送開始前から、「ラインナップが凄すぎる」と話題を集めていた2021年4月期のテレビドラマ。中村倫也(『珈琲いかがでしょう』(テレビ東京系))、菅田将暉(『コントが始まる』(日本テレビ系))、横浜流星(『着飾る恋には理由があって』(TBS系))、綾野剛(『恋はDeepに』(日本テレビ系))、松坂桃李(『今ここにある危機とぼくの好感度について』(NHK総合)、『あのときキスしておけば』(テレビ朝日系))といった人気男優の出演作や、脚本家・坂元裕二の新作『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)、約16年ぶりとなる『ドラゴン桜』(TBS系)の続編、ジェーン・スーのエッセイをドラマ化した『生きるとか死ぬとか父親とか』(テレビ東京系)等々……。注目作がひしめいていた印象だ。5月に入り、視聴率や評価の面で優劣は見えてきたものの、連日何らかのドラマの話題がTwitterのトレンド入りを果たし、やはり“強さ”が光る。
国内のテレビドラマといえば、脚本家も重要視される。今期は、映画『花束みたいな恋をした』が大ヒット中の坂元裕二(『大豆田とわ子と三人の元夫』)、『ジョゼと虎と魚たち』の渡辺あや(『今ここにある危機とぼくの好感度について』)、『俺の話は長い』(日本テレビ系)の金子茂樹(『コントが始まる』)、『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)の金子ありさ(『着飾る恋には理由があって』)等々、これまた豪華なメンバーがそろった。人気を獲得するのも納得だが、よくよく見ると各作品に“仕掛け”が施されていることに気づく。
ひとつは、サプライズ出演だ。菅田将暉、神木隆之介、仲野太賀、有村架純、古川琴音という人気実力派をそろえた『コントが始まる』は、事前告知なしに中村倫也と芳根京子というビッグネームを投入。第1話終了後の次回予告でふたりの出演が明かされると、ファンは騒然とした。しかも1話限りのゲスト出演ではなく、レギュラーというところが重要。中村は主演ドラマ『珈琲いかがでしょう』、芳根も主演ドラマ『半径5メートル』(NHK総合)が同クールに放送と、なかなかに異例の事態となった。余談だが、松坂桃李も『今ここにある危機とぼくの好感度について』『あのときキスしておけば』と主演作が2本放送中だ。
サプライズといえば、『大豆田とわ子と三人の元夫』は仕掛けが満載。予告編で斎藤工や神尾楓珠のゲスト出演が明かされたり、ナレーションを伊藤沙莉が務めることがオンエア時に判明したり、バンド「ペトロールズ」のフロントマンであり、東京事変のメンバーとしても活躍する長岡亮介が登場したりと、意外性が抜群。さらに「毎話変わる」主題歌が視聴者を驚かせた。松たか子、岡田将生、角田晃広、松田龍平といった出演者が主題歌にも参加しており、観賞欲を底上げしている。
従来の流れであれば、事前にゲスト俳優等を発表し、オンエアまでにファンを引っ張ってくるようなプロモーションが一般的だったが、『コントが始まる』や『大豆田とわ子と三人の元夫』においてはあえてそれらを行わずに「放送時に驚いた視聴者がSNSに投稿→話題を集める」というような戦略を重視しているようにも見える。『コントが始まる』では中村や芳根が1回きりの出演ではないこともあるだろう。とはいえ、彼らほどの人気があれば、従来通りの事前告知というアプローチであっても、効果は絶大だったはず。
そこでひとつ考えられるのは、見逃し配信の存在だ。『コントが始まる』であればHuluやTverで見逃し配信があるため、そちらに流すことが可能。さらにHuluでは、スペシャルコンテンツ『マクベスの23時』も配信中。劇中に登場するお笑いトリオ「マクベス」のメンバーが視聴者からの質問に答えるという参加型番組となっており、そちらに視聴者を連れて行きたい意図もあるのではないか。“リアタイ視聴”だけでなく“見逃し配信”も隆盛を極めてきた昨今、プロモーション戦略も多様性を見せてきたように感じる。
ちなみに、Tverは無料で視聴できる代わりに、最新話の放送が始まると前回は消滅するため連続ドラマにおいては基本的に1週間の限定配信となり、間にCMも入る。HuluやParaviは月額利用料がかかる代わりに、何度も観られてCMは挿入されない。さらに、放送中のドラマのオリジナルコンテンツがついてくる。放送局にとっては、視聴者から直接「利用料金」をもらえるシステムでもある。