今期ドラマはサプライズ満載！　『着飾る恋』『まめ夫』『コントが始まる』などの“仕掛け”

　そういうこともあってか、いまや各プラットフォームでスピンオフ作品を放送するのが主流となってきた。往々にして、サブのキャラクターにフォーカスした物語が展開し、本編を補完する内容になったり、はたまたメタ的な展開になったりする。ただ、『珈琲いかがでしょう』のParaviによる配信限定コンテンツ『珈琲“もう一杯”いかがでしょう』はちょっと変わっている。

　こちらでは、磯村勇斗がメインのスピンオフではあるのだが、本編の主演俳優である中村も出演しており（配信限定のスピンオフの場合、本編の主役は登場しない場合も多いのだ）、まさに“もう一杯”なおかわり的内容。話としても、本編と密接につながっており、両方を観ることで完成するといっても過言ではない。これもまた、現代ならではの戦略といえるかもしれない。

　『着飾る恋には理由があって』は、また違ったプロモーションを仕掛けている点が興味深い。本作を観ていて、「おや？」と思った部分がないだろうか。それは、実際の商品名やサービス名がどんどん登場すること。たとえばLINEがそのまま登場する（ロゴもしっかり映し出される）し、第1話の中でも雑誌の『dancyu』や「アート引越センター」、「リポビタンD」に「明治おいしい牛乳」等々、隠されることなく出てくるのだ。明治や大正製薬はスポンサーのようだが、視聴者にとって違和感なく商品を組み込んでいる点が上手い。また、LINEにおいては公式コラボスタンプを作成するなど、ドラマの外でもコラボ。LINEの公式アカウントも存在し、がっつりタッグを組んだ企画といえそうだ。

　そして、もうひとつ面白い仕掛けがある。実は、劇中に登場する家具や小物、食器が実際に買えるというプロモーションを行っているのだ。川口春奈演じる主人公がインテリアメーカーの広報担当でインフルエンサーでもあるという設定ともリンクしており、彼女が演じる真柴くるみのInstagramアカウントも存在。本作では、様々な面において現実とのリンクが張られており、「登場人物に憧れて、使っているアイテムを購入したくなる→導線が引かれている」という点で、このドラマ自体がインフルエンサー的な役割を果たしているといえる。映像的にも、Instagramのリール的な演出や、スマートフォンの操作画面が映像内に映し出されるなど、デザイン性が光る本作。こうした話題作りは、他作品と一線を画していて創意工夫を感じさせる。

　4月期ドラマは話題作・力作がそろい踏みした多士済々なラインナップといえるが、打ち出し方も多種多彩。これから後半戦に差し掛かっていくが、さらなるサプライズにも期待できそうだ。ドラマの内容はもとより、「届け方」においても引き続き注目していきたい。

■SYO
映画やドラマ、アニメを中心としたエンタメ系ライター／編集者。東京学芸大学卒業後、複数のメディアでの勤務を経て、現在に至る。Twitter

■放送情報
火曜ドラマ『着飾る恋には理由があって』
TBS系にて、毎週火曜22:00～22:57放送
出演：川口春奈、横浜流星、 丸山隆平、中村アン、飯尾和樹（ずん）、山下美月（乃木坂46）、 高橋文哉、向井理、夏川結衣
脚本：金子ありさ
プロデュース：新井順子
演出：塚原あゆ子
編成：松本友香、川島優子
製作：TBSスパークル、TBS
(c)TBS
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