小川紗良×橋本絵莉子、作り手として大切にしてきたもの 「やっぱり、楽しむしかない」

小川紗良×橋本絵莉子、特別対談

尖っていた20代を経てたどり着いたもの

――先ほど小川さんは、小学生の頃からチャットモンチーを聴いていたと言っていましたが、何かきっかけとかあったんですか?

小川:小学生の頃、家のリビングのテーブルの上に、チャットモンチーの「シャングリラ」のCDが置いてあって。多分、発売されたばっかりの頃だったと思うんですけど、刺繍でウサギの絵が描かれているジャケットで、「あ、かわいい!」と思って手に取って。私は鍵っ子だったんですけど、小学校から帰ってきてひとりの時間に、そのCDをずっと流して聴いていて。「シャングリラ」も好きなんですけど、カップリングで入っていた「小さなキラキラ」っていう曲が、私は特に好きです。もちろん、他にも好きな曲はいっぱいあるんですけど、その「小さなキラキラ」はずっと好きで、それから中学生、高校生、大学生、そして社会人になってからも、いろんなタイミングで聴いていたんですよね。その“小さなキラキラ”っていう言葉が、恋心のように思えたり、何かを夢見る気持ちに思えたり、聴くタイミングによって、自分の中でいろんな意味に聴こえるようなところがあって。

橋本:嬉しいです。あ、小川さんって今……。

小川:24歳です。

橋本:ああ……私がチャットモンチーでデビューしたのが、21とか22ぐらいのときだったから、ちょうど「シャングリラ」を出したぐらいの年齢かもしれないです。

小川:そうなんですか!

――当時の橋本さんは、結構尖っていた印象がありますけど(笑)。

橋本:そうかもしれないです。その頃は、絶対舐められたくないって思っていて。女の子3人のバンドって、絶対舐められて見られるだろうって、すごい思っていたんですよね。だから、その頃は、内心ものすごい尖っていて……。

小川:そうだったんですね。

橋本:もちろん、単純にバンドをやっていて楽しいっていうのが、いちばん強かったんですけど、何かそういうゾーンに入っていたところがあったんですよね。だから、すごい視野は狭かったと思います。もう一直線だったので。

――それこそ、今、そのぐらいの歳ごろである小川さんに、何かアドバイスとかってありますか?

橋本:アドバイスなんて、ないですよ(笑)。でもやっぱり、楽しむしかないですよね。あとになったときに、楽しかったなって思えるのがいちばんというか、それを思い出すとすごい豊かな気持ちになれるから。

小川:ちょっと変な質問かもしれないですけど、その頃の尖っていた気持ちっていうのは、今、橋本さんの中でどんなふうになっているんですか?

橋本:そのときの気持ちですか? うーん、どうだろう。やっぱり当時は、すごい背伸びしていたと思うんですよね。年齢よりも上に見られたいとか。まあそれも全部「舐められたくない」からきているんですけど。だから、すごい背伸びをして、何か難しいことをやらなきゃ一人前に思われないんじゃないかとか、簡単なことをやっちゃダメなんじゃないかとか、いろいろ思ったりとかして。それでちょっと、自分の首を絞めていたところもあったのかなっていう。

小川:なるほど。

橋本:っていうことが、30代の後半になった今、ようやく見えてきたところがあって。別に簡単なことでも良かったり、好きだったりしたらいいやんっていう。今だったらすごいそう思うんですけど。だから、いい感じに力が抜けてきているのかな(笑)。そんな苦しくせんでも良かったなって、今は思います。

――今回の「あ、そ、か」をはじめ、ソロになってからの楽曲や歌詞には、そういう思いが少し出てきているような感じがありますよね。

橋本:出ていると思います。でも、だからと言って、20代の頃にやってきたことを後悔しているわけでは全然なく。そこを経ていないとわからないことだったと思うし、それはそれですごい大切だったと思うんですよね。

――なるほど。橋本さんのほうから小川さんに、何か聞いてみたいことってありますか?

橋本:小川さんは普段、役者の仕事もされていて、映画監督もされていて、その違いっていうのは、やっぱりありますよね。役者さんは、与えられた役を演じるわけで、そこは全然違いますよね。

小川:違いますね。実際に現場でやることや、その視点みたいなものがまったく違うので。それが混在すると、カオスになるんですけど(笑)。

橋本:「私だったらこう撮るのに」とか考えてしまったり?

小川:そういう考えは役者にとっては完全に邪魔なので、そこはできるだけ分けて、役者の時は役者に集中するようにしています。私はそもそも、大きく言うと映画作りっていうのもの自体が好きなんですよね。だから役者であろうと監督であろうと、あるいはもしかしたら衣装や録音だったりしても、その作品の一部であるっていう意味では同じだと思っています。たとえ自分がどの場所にいても、信頼できる人たちと一緒に映画というひとつの作品を作り上げることが、やっぱり私は好きなんですよね。

■公開情報
『海辺の金魚』
6月25日(金)より、新宿シネマカリテほか公開
出演:小川未祐、花田琉愛、芹澤興人、福崎那由他、山田キヌヲ
監督・脚本・編集:小川紗良
撮影:山崎裕
音楽:渡邊崇
スチール:川島小鳥
企画・プロデュース:小出大樹
共同プロデューサー:岡田真、佐藤現
特別協力:鹿児島県阿久根市・阿久根市フィルムコミッション 
製作・配給:東映ビデオ  
(c)2021東映ビデオ
公式サイト:umibe-kingyo.com
公式Twitter:@UmibeKingyo

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