中村倫也の“金髪”青山の破壊力 『珈琲いかがでしょう』ドラマへの翻案で生まれる余韻
「君は? ブレンド? ストレート?」
中村倫也主演の『珈琲いかがでしょう』(テレビ東京系)第3話では、人生の味わいがじっくりと引き出される「男子珈琲」と「金魚珈琲」が描かれた。「男子珈琲」は、原作漫画にも登場するエピソード名。だが、その中身はドラマオリジナル脚本へとアレンジされている。ストレートに原作を楽しむもよし、監督やキャストが化学反応を起こしたまさにオリジナルブレンドなドラマを味わうもよし。何層にも渡って沁み入る“珈琲”の余韻が心地よい
個性派俳優の素敵なパンチ感
原作の「男子珈琲」は、少年と老人がコミュニティメンバーの顔色を気にして、仲間はずれにされているキラワレ者な友人との距離感に思い悩む話。一方、ドラマで紡がれたのは、イケてると思っていた自分こそが実はキラワレ者で、ダサい友人のほうがみんなに好かれていたという視点の違いもまた味わい深い。
そのキラワレ者と友人を演じているのが、戸次重幸と小手伸也というキャスティングもまたグッとくる。戸次が演じる飯田は体型を維持するために毎晩筋肉体操で汗を流す。「ヨン様に似ている」と言われた日からストールスタイルを貫き、加齢臭を気にして香水をつけまくり、現場では仕事ができる自分を演出していく……だが、そのどれもが後輩社員からは「イタい」と見られていたことに気づかされる。ガラガラと崩れていく自分像。その自信喪失な姿が切なくも、むしろ気づけてよかったと思わせる不思議な哀愁を醸し出す。
対して、小手が扮する森は中年らしいルックスを「ありのままの自分でいい」と受け入れ、年相応の余裕を身につけた言動で信頼を得ていくキャラクター。ストレートに「イケてる人」とは言われにくいかもしれない。しかし、その中身を知っている人はその場に必要とされる大切な存在として認められる。飯田と森の対比を描くことで、より青山(中村倫也)が淹れるブレンド珈琲が際立つ。
キリマンジャロやコロンビアのようにストレートに主役級の魅力を放つ人はいる。だが、ジャバロブスタのように単体では「イケてない」と見なされても、ブレンドしたときに“なくてはならない”味わいを引き出す名脇役となる人もいる。似ている誰かの真似ではなく、何かの香りでごまかすのではなく、自分ができることを磨き続けることで、その良さが際立っていく。
また、ストレートに「イケてる」と言われる人だって、他の強いクセを持つ人たちがいるからこそ、単体で輝くとも言える。誰もがお互いの個性を引き立て合っているのだ。だから、同じところにとどまらず、人々との継続した関係性を絶っている青山はどちらのタイプとも答えることができないのかもしれない。