『リコカツ』で描かれる“同居あるある”の数々 永山瑛太の徹底した役作りも実感

『リコカツ』で描かれる“同居あるある”

 ただ、実際には咲の希望に合わせて住まいを東京にした結果4時起きになっているのであって、家訓の掲示や唱和を拒否した咲だが、自分の家族について“個人主義でバラバラだ”と言われると「言っても良いことと悪いことがある」と怒りをぶつけていた。紘一にとっては、家訓を邪険にされることが緒原家を侮辱されることと同じであるように。

 紘一の特徴的なキャラクターによって、彼の突拍子のなさばかりが際立って見えるが、よくよく見てみると“お互い様”な部分も少なくないのではないだろうか。紘一も、家訓の話を持ち出されるまでは、きちんと咲の不満をメモし、自分なりに咀嚼しようとしていた(なかなかそんな人いないのではないだろうか)。

 また紘一の職業柄、ことさら強調して描かれていたが、夕食を作って待っていたのに連絡がない、挙句「先に食べておいてくれて良かったのに」と言われる、仕事について聞いてもまともに話してくれないなどは、同棲中のカップルでも経験したことがある人も少なくないだろう。

 永山と言えば、ドラマ『アンフェア』(フジテレビ系)での意外すぎる黒幕役や、映画『友罪』での鈴木秀人(本名は青柳健太郎)役などどこか影のある役どころの印象が強く、どちらかといえば繊細で中性的な雰囲気を纏った役柄のイメージがあった。それが本作では、バッキバキに鍛え上げられた肉体、“堅物”ぶりを見事体現した表情、話し方、発声、全てにおいて徹底した役づくりで、男性性を全面に押し出したこれまでにない永山瑛太を見せている。

 ラストに、紘一以上に頑固な父親が遂に妻に三行半を突きつけられ呆然とする姿も描かれており、咲の母親もレディースクリニックの診断結果に何かしら苦悶の表情を浮かべた後に「リコカツ」に関する本を購入していた。咲の姉も何か夫婦関係について秘密を隠していそうだ。

 「離婚」というある意味、共通の目的を持った共同作業から始まるラブストーリーも存在するのだろうか。紘一と咲の関係性がどう変化していくのか、早くも次話が気になる。

■佳香(かこ)
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
金曜ドラマ『リコカツ』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:北川景子、永山瑛太、高橋光臣、白洲迅、大野いと、田辺桃子、中田クルミ、平岩紙、宮崎美子、酒向芳、三石琴乃、佐野史郎
脚本:泉澤陽子
演出:坪井敏雄ほか
プロデュース:植田博樹、吉藤芽衣
主題歌:米津玄師「Pale Blue」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作著作:TBS
(c)TBS

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