映画興行の「日常」は戻ってくるのか? 半年以上続く「ヒット作独り勝ち」現象

半年以上続く「ヒット作独り勝ち」現象

 先週末の動員ランキングは、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が、土日2日間で動員16万1000人、興収2億6500万円をあげて1位となった。4月11日までの35日間の累計動員は484万8041人、累計興収は74億2624万3700円。これで、昨年の10月16日に『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が公開されてからちょうど半年間、週末の興収1位作品は『鬼滅の刃』(4月11日までの累計興収は396億2071万50円)と『花束みたいな恋をした』(4月11日までの累計興収は36億2047万6320円)と『シン・エヴァ』のたった3作品に独占されたことになる。連続1位は『鬼滅の刃』が15週、『花束みたいな恋をした』が6週、『シン・エヴァ』が5週。おそらく、というか間違いなく、そのバトンを受け取るのが、今週末公開の『名探偵コナン 緋色の弾丸』ということになる。

 先週末の2位は『劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班』。公開週となった前週は初登場4位だったので、ランキング上では上昇したわけだが、先週末の興収は9200万円。同一作品の連続1位が続いているだけでなく、1位作品と2位作品の差の大きさもこのところ続いている傾向だが、遂に2位作品の週末興収が1億円を割ってしまった。

 もう薄々気づいている人も多いと思うが、パンデミック以降、実際のところ映画興行において「日常」は戻ってきていない。作品を映画館に観に行くことそのものが「イベント化」した一部の作品を除いて、日本映画、外国映画ともに多くの作品が低空飛行を続けている。特に深刻なのは、これまで比較的年間鑑賞本数の多い観客に支えられてきた外国映画だ。日本映画製作者連盟が発表した「2020年全国映画概況」(参照:http://www.eiren.org/toukei/img/eiren_kosyu/data_2020.pdf)によると、日本の映画興行における外国映画の比率は2019年の45.6%から2020年は23.7%に急落。もちろんその背景には、ハリウッド・メジャーの作品が軒並み公開延期になってきたことや、『鬼滅の刃』の異常なヒットなどがあったわけだが、2021年も3分の1近くが経過して、もはやその二つだけに要因を求める段階ではないと考えるべきだろう。

 例えば、昨年はパンデミックの直前までアカデミー賞受賞を受けて『パラサイト 半地下の家族』が日本でも大ヒットしていたわけだが、今年のアカデミー賞最有力候補との前評判の高い『ノマドランド』は、3月26日に日本公開されて以来、ランキングのトップ10にすら1度も入っていない。今年のアカデミー賞授賞式は例年より2カ月遅い4月26日(日本時間)。仮に下馬評通り『ノマドランド』が作品賞を受賞したとしても、そこから大きく風向きが変わるとは思えないというのが正直なところだ。

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