原作モノ実写化は“ネットの話題性”重視? 『ゆるキャン△』など成功例から考える

原作モノ実写化は“ネットの話題性”重視?

 原作モノというとベストセラー小説や人気マンガの映像化ばかりが頭に浮かぶが、そういった作品は、企画としての規模が大きいため、映像化するまでに時間がかかってしまう。 

 特に少年マンガの超大作は予算がかかり、アクションやVFXに力を入れないと作品として成立しないため、劇場映画、そうでなければNetflix等の配信ドラマに企画が流れてしまう。 対して『夢中さ、きみに。』のような、知る人ぞ知る小規模な作品なら、深夜枠で力のある監督が少数精鋭で撮った方が完成度の高い作品に仕上がる。同時に、マニアックな作品ゆえに「あれを映像化するのか?」と注目され、ネットでバズることも多くなる。

 現在、第2期が放送中の『ゆるキャン△』(テレビ東京系)も、ネットで話題となった原作モノだ。

『ゆるキャン△2』(c)ドラマ「ゆるキャン△」製作委員会

 あfろの同名漫画をドラマ化した本作は、先に作られたアニメ版が好評だったこともあり、実写ドラマ化が決まった時は批判的な声もネット上では多かったのだが、昨年、第1期が放送された際には、マンガのレイアウトや空気感を忠実に再現することで「理想の実写化だ」と評価が逆転した。

 何より素晴らしかったのが福原遥、大原優乃といった出演俳優の演技で、マンガのキャラクターを生身の俳優が演じるという点において完璧だった。キャンプの魅力である自然の風景もドローンによる空撮を駆使して美しく撮られており、珠玉の青春ドラマに仕上がっている。

 原作漫画に寄せることで大成功したのが『ゆるキャン△』なら、原作の魅力を抽出した上でドラマ独自の世界に昇華しているのが、現在放送中の『生きるとか死ぬとか父親とか』(テレビ東京系)だ。

『生きるとか死ぬとか父親とか』(c)「生きるとか死ぬとか父親とか」製作委員会

 ジェーン・スーが父親との関係を綴った同タイトルのエッセイを、吉田羊と國村隼が主演を務める父娘の物語に脚色した本作は“令和の向田邦子ドラマ”とでも言うような緊張感のある物語となっており、早くもSNSで話題だ。

 監督とシリーズ構成は『溺れるナイフ』や『ホットギミック ガールミーツボーイ』等の映画や、乃木坂46等のMVの監督として知られる山戸結希が担当しており、彼女が得意とする細かく編集された不安を煽る圧の強い映像と、虚実の境界が曖昧なドキュメンタリー的アプローチがうまくいっており、今クール最大の問題作となりそうだ。

 どの作品も少数精鋭の深夜ドラマだからこそ、映像化する上でのコンセプトが、はっきりと打ち出されている。こういう作品はネットでの注目も集まりやすい。

 原作モノの実写ドラマ化というだけでネガティブに語られることも多いが、全ては見せ方次第だと、この3作は教えてくれる。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
ドラマ24『生きるとか死ぬとか父親とか』
テレビ東京系にて、毎週金曜深夜0:12〜放送
※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0:00〜放送(1話・2話は深夜0:05〜放送)
原作:ジェーン・スー『生きるとか死ぬとか父親とか』(新潮社刊)
主演:吉田羊、國村隼、田中みな実、松岡茉優、富田靖子、DJ松永(Creepy Nuts)、オカモト“MOBY”タクヤ(SCOOBIE DO)、森本晋太郎(トンツカタン)、ヒコロヒー
オープニングテーマ:高橋優「ever since」(unBORDE / Warner Music Japan)
監督:山戸結希、菊地健雄
シリーズ構成:山戸結希
脚本:井土紀州
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:佐久間宣行(テレビ東京)、祖父江里奈(テレビ東京)、半田健(オフィスアッシュ)、平林勉(AOI Pro.)
制作:テレビ東京、オフィスアッシュ
製作著作:生きるとか死ぬとか父親とか」製作委員会
(c)「生きるとか死ぬとか父親とか」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/ikirutoka/
公式Twitter:@tx_ikirutoka

『ゆるキャン△2』
テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知にて、毎週木曜深夜0:30〜1:00放送
BSテレ東/BSテレ東4Kにて、毎週火曜深夜0:00〜0:30放送
放送終了後、Amazon Prime Videoでも配信
出演:福原遥、大原優乃、田辺桃子、箭内夢菜、志田彩良、石井杏奈、橋本じゅん、柳ゆり菜、土村芳
原作:『ゆるキャン△』あfろ(芳文社)
脚本:北川亜矢子
監督:二宮崇、吉野主、玉澤恭平
音楽:小田切大
主題歌:LONGMAN「Hello Youth」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
エンディングテーマ:門脇更紗 「わすれものをしないように」(ビクターエンタテインメント)
チーフプロデューサー:森田昇(テレビ東京)
プロデューサー:合田知弘(テレビ東京)、熊谷喜一(ヘッドクォーター)、岩倉達哉(SDP)
制作 : テレビ東京/SDP/ヘッドクォーター
製作著作 : ドラマ「ゆるキャン△」製作委員会
(c)ドラマ「ゆるキャン△」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/yurucamp/
公式Twitter:@yurucamp_drama
公式Instagram:@yurucamp_drama

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