『きれいのくに』は“2回目の視聴”がさらに面白い! 第1話から垣間見えた挑戦的な脚本

『きれいのくに』は2回目がさらに面白い

 よるドラ『きれいのくに』(NHK総合)が4月12日よりスタートした。昨日、放送前に公開されたネタバレを伏せた記事(『きれいのくに』は想像以上のヘビーな内容に 吉田羊の哀愁、稲垣吾郎の不穏さに注目)には「想像よりもずっとヘビーな内容というのが率直な感想」と書いたが、正確にはこれも少々違う。「思ってたのと全然違う!」が観終えた時の正直な感想だった。

「見た目へのコンプレックスを抱える高校生たち。そんな彼らが暮らすのは大人が同じ顔をした世界だった。一体この国で何が起きているのか」

 というのが放送前に流れていた番組のCMナレーション。ルッキズムを投げかけるドラマなのかと思っていたら、第1話には全く高校生たちは出てこず、最後に待ち受けていたのが恵理(吉田羊)が10年前の恵理(蓮佛美沙子)の姿に若返ってしまうという大どんでん返し。確かに「青春ダークファンタジー」「ジュブナイルSF」というキャッチコピーは言い得て妙である。

 脚本を手がけるのは、新進気鋭の劇作家・加藤拓也。公式コメントにも明かされている通りに、この『きれいのくに』は加藤が駄目元で提案したにも関わらず採用された“変な話”。「変ながら、私とあなたの、わかるようなわからないような気分が詰まってるんじゃないか」「最後まで、ちゃんと観ないとわからないぞというつもりで書きました」というように、人物設定と物語をきちんと把握しておかないと、よく分からないまま振り落とされかねないだろう。

 物語の中心にあるのは「好きな人の、好きな顔になりたい」という思い。恵理と宏之(平原テツ)は結婚10年目になる夫婦で円満に見えるが、会話の端々には互いの微妙な心のズレがあらわになっていく。それは旅先でも恵理の体を求めてこない宏之の態度からも明らかだ。

 そして、途中から登場するのが佐川(蓮佛美沙子)と健司(橋本淳)の夫婦。時系列が五月雨式になっているため、1度目の視聴では理解しづらいが、佐川は恵理の若い頃(33歳)の姿であり、健司は元夫。関係に行き詰まりを感じている時に、税務相談で出会うのが宏之だった。体を求め合う関係だったあの頃とは違って、今は誕生日に一人でワインを飲む43歳の恵理。哀愁を帯びた吉田羊の姿に容姿が衰え始めた若さへのコンプレックスを感じさせる。最後の若返りとスタッフロールに表示される「恵理(43)吉田羊」「恵理(33)蓮佛美沙子」でこれまでの流れを繋ぎ合わせる巧妙かつ挑戦的な脚本は見事だ(2度目の視聴はさらに面白いのでお勧め)。

 「好きな人の、好きな顔になりたい」という思いが起こした若返りのように思えるが、どこか恵理自身にも秘密があるようにも見えてくる。第2話では20代の頃の恵理(小野花梨)と健司(須賀健太)も姿を見せる。この若返りの謎が少しづつ語られていくのだろうか。

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