『きれいのくに』は想像以上のヘビーな内容に 吉田羊の哀愁、稲垣吾郎の不穏さに注目

『きれいのくに』は想像以上のヘビーな内容に

 よるドラ『きれいのくに』(NHK総合)が4月12日よりスタートする。

 『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』『いいね!光源氏くん』『ここは今から倫理です。』など、数々の名作を生んできた「NHKよるドラ枠」が土曜日から月曜日に移行して1作目を飾るのがこの『きれいのくに』となる。

 このドラマを説明するために、公式にもある「青春ダークファンタジー」の言葉を借りることにするが、先に試写で観た立場からすれば、想像よりもずっとヘビーな内容というのが率直な感想だ。ドラマの根幹となる、ある出来事を機に、この作品の見方は一気に変容していくこととなる。その重苦しい空気の中心にいるのが、第1話の主演を務める吉田羊だ。

 物語は恵理(吉田羊)の主観でスタートする。恵理と宏之(平原テツ)は40代の夫婦で結婚10年目。旅先の会話の端々から滲み出るのは、夫婦の間に生じる微妙なズレ。身体も心も離れてしまった互いの距離だ。第1話にはもう一組、夫婦生活に不満を持つ男女が登場し、やがてこの2組が交錯していくこととなる。

 公式サイトのインタビューで「見た目も適齢の私が言ってこそ説得力が出る台詞っていうのがたくさんあって」と話しているように、吉田羊にとってこの役はほぼ同世代のある種、等身大の役柄である。煌びやかな装飾品で着飾ったようなオーバーな演技よりも、丸裸で挑む素の演技の方が役者にとっては難しいと聞くが、吉田にとっての恵理はほぼ後者に近い役柄であったはずだ。

 先日、吉田羊と國村隼をダブル主演にスタートしたドラマ『生きるとか死ぬとか父親とか』(テレビ東京ほか)。たった一人の父親に献身的に寄り添い、ラジオパーソナリティー・コラムニスト・作詞家と多彩な顔をもち、女性からの圧倒的な支持を集める”独身のカリスマ“として生きる蒲原トキコを吉田は演じている。

 一人だけど前を向いている蒲原に対して、『きれいのくに』の恵理は夫婦として2人でいるけれど未来を諦めてしまった、諦めざるを得ない女性に思える。夫から誕生日プレゼントにもらったワインを恵理が一人で飲むシーンは、哀愁を漂わせながら、その諦めを強く放っているように感じた。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる