花江夏樹の炭治郎とは違う低音ボイスにも注目 『オッドタクシー』の絶妙なブラックユーモア

 タクシーとは奇妙な空間だ。運転手といういわばどこの誰かも知らない他人にも関わらず、自分のプライベートを曝け出してしまう。誰かと一緒に乗車したならば、運転手が聞いているのに、仕事の大事な話を思わず、なんてこともきっとあるだろう。運転手との距離の近さ、客としての信頼、外界から隔離されたような感覚。それらが相まって、不思議と心を解放してしまう。バスや電車にはない特異性がタクシーにはある。

 4月5日よりスタートしたアニメ『オッドタクシー』(テレビ東京ほか)は、そんなタクシーを起点にした作品だ。中心にあるのは会話劇。花江夏樹演じる41歳のタクシー運転手・小戸川の偏屈で皮肉屋なその性格から、客との丁々発止の会話が繰り広げられていく。

 第1話で乗車する樺沢は、SNSでバズることだけに縛られている大学生。「いいねやフォロワーの数がそいつの値段」「感動系かスカッとする勧善懲悪系とか、それと外国人目線からの日本のジェンダー論」とSNSによる価値観とコツを話す樺沢に、例としてバズっているツイートを見せられ「気持ちわりぃ」と嫌悪感を丸出しにしてバッサリ論破する小戸川。毒とユーモアの塩梅が観て(聞いて)いてとても気持ちがいいのだ。

 そんな毒っ気を見事に帳消しにしているのが、可愛らしいキャラクターたちだ。小戸川がセイウチ、樺沢がコビトカバ、警官の大門兄弟がミーアキャット、医者の剛力がゴリラ、看護師の白川がアルパカ……といったように、登場するのは全員が動物。けれど、アニメの中では私たち人間と同じように生きている。樺沢が乗り降りするのは、渋谷から練馬まで。車内から見える街並みもどこかで見たことのある看板ばかり。車内で流れる深夜ラジオに、ブルース・スプリングスティーン、スティーヴィー・ワンダーといった実際に存在する固有名詞まで物語の中には登場する。〈見てごらん よく似ているだろう 誰かさんと/ほらごらん 吠えてばかりいる 素直な君を〉とかつて歌われたECHOESのヒット曲「ZOO」が『オッドタクシー』にはよく似合う。

【オッドタクシー】小戸川役・花江夏樹 インタビュー映像

 そして、驚かされたのは小戸川を演じる主演・花江夏樹の存在だ。もはや説明不要ではあるが、花江は『鬼滅の刃』の竈門炭治郎を演じていた。特徴的なのは炭治郎のイメージとはまるで違う、その低音ボイス。公式YouTubeチャンネルのインタビューにて花江自身も語っているが、身体が大きい40代の中年男性を演じるのはこれが初めてであり、花江にとっては挑戦の役柄でもある。寡黙で鬱屈としていながらも、話すときはタガが外れたように一気に話す。ボソボソ声とお茶目でユーモラス一面を行ったり来たりしながら、小戸川を見事に演じきっている。

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