実写なのにアニメ―ション? 『PUI PUI モルカー』から“ピクシレーション”を考える

『モルカー』からピクシレーションを考える

なぜ映画は1秒間24コマになったのか

 そもそも映画はなぜ1秒間24コマになったのだろうか。

 それが自然な動きを記録するのに最も適した数字だから、ではない。むしろ技術的、経済的な理由が大きい。

 まず、サイレント映画時代に1秒間16コマという速度が選ばれた理由はなんだろうか。ジョセフ・プラトーは1829年に発表した研究論文『残像の持続』で彼は、「一秒間に起こった一つの動きを表す16枚の絵が次々と示されれば、視覚の残像効果によってそれは一体と感じられ、元の動き同様のものを近くする」と述べている。だがこれは科学的な論証というより経験則にもとづくものだったのではないかという説もあるようだ。(※10)

 映画の父リュミエール兄弟も様々なコマ数を試したようだ。16コマあれば動くものを見るのに十分と判断したらしい。(※11)

 だが16コマの上映はチラつきが生じる。人間の目がちらつきを感じなくなるのは、1秒50コマほど必要だそうだが、それでは16コマの3倍近くもフィルムを消費してしまう。そこで1つのコマを映写する度に2,3回シャッターを開閉することで、16コマを疑似的に50コマ近くあるように見せ、チラつきを抑える映写技術が開発された。

 それがなぜ24コマになったのかと言うと、音のせいである。16コマ撮影では音を同期させられなかったのだ。アメリカの電流は60Hzであり、カメラと録音機を同期させるモーターを用いて16コマの回転で録音しても満足な音質が得られなかったが、これを24コマで行ったところ、音質が安定したのだという。今日、映画っぽいと言われる1秒間24コマの映像は、映像そのものの良さを追求したのではなく、アメリカの電気事情と音との同期の問題から生み出された回転数だった。(※12)

 映写システムは1秒間24コマになっても、やはりチラつきを抑えるために1コマにつき一度のシャッターの開閉を必要としている。1つのコマの間にシャッタ―を挟めば、疑似的に1秒間48コマのようになる。チラつきを感じさせない50コマに近い数字だったので、これが映画の基準となった。

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