『ニジガク』はなぜ“同好会”を描いたのか? 『ゆるキャン△』に共通する“個の尊重”

 アニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(以下『ニジガク』)が最終回を迎えた。

 これまでにアニメ化された『ラブライブ!』『ラブライブ!サンシャイン!!』からメインスタッフを一新し、異なる方向性に舵を切った本作。筆者が観測した限り、この方向性の転換は旧作ファン、新規ファンの双方に受け入れられ、絶賛と言ってよい評価を得ているように思う。

TVアニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」PV

 『ニジガク』の旧作との差異は無数にあるが、特に重要なものを挙げるなら、「全員で力を合わせて目的を達成する」団結の物語だった旧作と比較して、“個の尊重”というテーマが作品全体に貫かれている部分だろう。

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 『ニジガク』に登場する虹ヶ咲学園の“スクールアイドル同好会”は、かつて一度瓦解している。それは1年生の中須かすみと、2年生の優木せつ菜の“目指したいアイドル像”が異なっており、折り合いをつけられなかったことが原因だ。ふたりとも、自分の“大好き”の形は譲れない。それがスクールアイドルをやるいちばんの理由だから。

 これに対して『ニジガク』は、それぞれが自分だけの“大好き”を表現し切るため、ひとりひとりが“ソロアイドル”として活動するという道を選ぶ。誰かが目指す輝きにみんなで手を伸ばすのではなく、ひとりひとりが自分の求める“いちばん”に手を伸ばすという在り方。そのために、全員が互いをライバルと見なし、協力し合い、励まし合い、競い合いながら活動していく様子が、エピソードごとに代わる代わるスポットが当たる少女たちの成長と共に描かれていった。

 なお、この“ソロアイドル”という在り方は此度のアニメ化のために打ち出されたコンセプトではなく、『ニジガク』がアプリゲーム『ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル ALL STARS』と連動して展開をはじめた頃からあったもの。これをアニメスタッフが丁寧にすくい取り、見事な物語展開への落とし込みを成功させたということだろう。

 互いの存在を尊重し、自分の在り方を押し付けることをせず、けれど寄り添うことが互いにとってポジティブな変化をもたらすという距離感。『ニジガク』が描くこうした関係性を考えたとき、同様の好ましさを感じたアニメ作品が近年、もうひとつあったことが頭をよぎった。

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