『おちょやん』ひと波乱巻き起こしそうな寛治(前田旺志郎)の存在感 戦争の影も忍び寄る

『おちょやん』ひと波乱巻き起こしそうな寛治(前田旺志郎)の存在感 戦争の影も忍び寄る

 第16週の舞台は昭和12年夏。テルヲが亡くなって5年が経ったある日、千代(杉咲花)と一平(成田凌)は新派出身の子役、松島寛治(前田旺志郎)を預かることに。NHK連続テレビ小説『おちょやん』が第16週初日を迎え、新たな登場人物であり、ひと波乱巻き起こしそうな寛治の存在感と、じわじわと忍び寄る戦争の影を感じさせる演出が印象に残る回となった。

 登場早々、鶴亀家庭劇の劇団員たちに楽屋泥棒と勘違いされてしまう寛治だが、泥棒ではなく新派出身の子役であることが明かされる。寛治は、新派の劇団の座長の子であり、母親はおらず父親も亡くしたばかりだった。寛治を演じている前田の快活な口調と笑顔から明るく元気な印象を抱くが、時折彼の表情には影が差す。例えば、熊田(西川忠志)が寛治の事情を説明した際、寛治の表情は徐々に強ばっていった。寛治の境遇は一平とよく似ており、そのうえ劇中で自身は役者ではない、役者になろうと思ったことがない、と話していることから、かつての一平のように父親に何らかのわだかまりがあるのかもしれない。

 基本的に寛治は表情豊かで溌剌としている。加えて、寛治は相手の懐に入るのがうまい。千代と一平に預けられた矢先、寛治は勝手に一平の書斎に入るが、一平の台本を褒めちぎってお咎めなしとなっていた。ご飯をひっくり返し落ち込んでいるかと思いきや、見事な嘘泣きを披露したり、千代の話を聞いているかと思いきや、こっそりその場を立ち去ろうとしたり、ちゃっかりした面もあり、その掴みどころのなさに目が止まる。

 しかし寛治の背景はまだはっきりとは明かされていない。悪い行いをする人物ではなさそうだが、明るく「振る舞っている」ように見える分、平穏な日々が描かれるとは思えない。前田が見せる演技に期待が高まる。

 また戦争の影が静かに忍び寄っていた。昭和12年夏、日中戦争が始まり、日本軍は勝ち続けていた。日本中が勝った勝ったの喜びに沸き、鶴亀家庭劇でも戦争を題材した愛国ものの芝居が人気を博していた。鶴亀家庭劇を観る観客らは、お国のために戦地へ行った若者の思いに涙を浮かべ、舞台上の演出に合わせ「万歳! 万歳!」と声を挙げる。芝居には観客の笑いや涙を誘う強さがある。しかしこのシーンでは、芝居が持つ強さに不穏な空気を感じた人も少なくないはずだ。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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