篠原涼子×いしのようこ、“強き”母親としての輝き 『おちょやん』絶妙な緊張と緩和の演出
福助と駆け落ちしようとしていたみつえを追いかけ、千代は「何べんでも無理言い続けたらいつかきっとごりょうさんも許してくれはる。必ず許してくれはる」「何でか分かるか。みつえのお母ちゃんやさかいな」と説得した。家族と暮らすことが叶わない千代が、みつえに家族や戻る家を失ってほしくないと訴えるのは切ない。優しかったという遠い思い出だけを残して、千代の母は早くに亡くなってしまった。
駆け落ちまで考えたみつえと福助の結婚を認めてもらうため、シズが「福富楽器店」に足を踏み入れ「みつえのこと福助さんに嫁がせてやってもらわれへんやろか」と菊と福松(岡嶋秀昭)に頭を下げる緊張の場面。ずっと確執のあったシズと菊なだけにどうなることかと固唾を飲む瞬間、なぜかみつえと福助がケンカを始める。「ええかげんにしなはれ!」と菊が言い放った相手はシズではなく、みつえと福助。「よそさんの前で夫婦ゲンカは絶対にしたらあかん。それがうちの決まりだす。よう覚えとき」と言い、シズも菊も最初から結婚に反対というより、今までの家同士の問題が大きかったことが分かる緊張が一気にほどけるシーンとなった。笑いと涙だけでなく、緊張と緩和の表現が絶妙で心をくすぐられる。
シズ役の篠原涼子、菊役のいしのようこのそれぞれの強さ、しなやかさ、凛とした美しさ、そして母が子供の幸せを願う表情が堪能できた第11週。華やかさと幸福感に包まれたみつえと福助の祝言で締めくくりとなったが、シズと菊と距離がすぐに縮まらないのも2人の関係性から考えると当然のこと。みつえと福助が家族となることで少しずつ変化していくシズと菊の今後の関係にも注目していきたい。
■池沢奈々見
恋愛ライター。コラムニスト。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/