仲野太賀×吉岡里帆の泣き笑いは『豊臣兄弟!』屈指の名シーンに 第13回と対の第19回

NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』第19回「過去からの刺客」は、慶(吉岡里帆)にとっての“雪解け回”だ。同時に、これまで押さえ込んでいた思いが堰を切って溢れ出す、吉岡里帆の圧倒的な芝居が堪能できる回でもある。
織田信長(小栗旬)からの命によって、小一郎(仲野太賀)のもとに嫁いできた慶。8年の月日が経っても、慶は小一郎たち家族と打ち解けてはいなかった。肩にあるという刀傷、“女狐”と呼ばれる所以の男との密通の噂。しかし、小一郎の家臣・高虎(佳久創)が、慶と村川竹之助(足立英)が密会しているのを目撃したことをきっかけに、膠着していた夫婦の関係が大きく動いていく。

慶が会っていた村川は、美濃・斎藤家の間者だった者だ。亡き夫との愛息・与一郎(高木波瑠)の姿を遠くから見守るために、慶は近江と美濃の国境にある村を訪れていたのである。
慶の前の夫は斎藤家に仕えた重臣で、稲葉山での戦いで討ち死にしている。その敗因は、慶の父・安藤守就(田中哲司)が織田に寝返ったことにあった。そのため、慶の義父にあたる堀池頼昌(奥田瑛二)の激しい怒りと憎しみは、与一郎を連れていこうとした慶へと降りかかる。あろうことか、頼昌は慶へと斬りかかったのだ。その刀傷が、今でも慶の肩に、そして心に深く残っているのである。
全ての事情を知った小一郎は、頼昌と妻・絹(麻生祐未)の元へ赴き、与一郎を養子として迎えたいと頼み込む。しかし、堀池家にとって与一郎は亡き息子が遺した大切な宝だ。憎き慶と、ましてや織田家の家臣に差し出すなど言語道断である。
慶にとって小一郎の行動は寝耳に水だったが、小一郎もまた、愛する直(白石聖)を亡くした身。夫として寄り添う小一郎の優しさに、慶の「与一郎と一緒にいたい。抱きしめとうございます」という痛切な思いが、一筋の涙とともに流れ出る。

小一郎と慶たち、そして頼昌と絹、与一郎らが対峙する形で一堂に会する場面は、頼昌を演じる奥田瑛二がコメントしているように、画面越しでも緊張感がひしひしと伝わる緊迫した長尺シーンだ。
小一郎たち家族と一緒にいるうちに、憎しみを忘れそうになると本心を明かす慶。「憎しみだけで生きていくのはあまりにも苦しくて。与一郎にはそんな思いはさせたくありません」と、自分たちの代わりに織田への恨みを晴らさせるようなことはしないでほしいと願い出る。

激怒する頼昌だったが、慶に斬りかかったあの日から、彼は刀が抜けなくなっていた。慶と同じく、頼昌もまたずっと罰を受けてきたのだ。
これは贖罪であり、それぞれが過去の呪縛から解き放たれる物語である。息子代わりの具足に、頼昌が「侍には戻れぬ」と話しかけ、あれだけ大切に拝めていた具足を、絹が否定するかのように倒す。かつての息子は「もっと優しく笑っておりました。そうよね、お慶」と絹が共感を求めると、慶の表情にはようやく笑顔が戻る。






















