2026年は佐藤二朗の二面性が炸裂 『夫婦別姓刑事』『SAKAMOTO DAYS』『名無し』の熟練

佐藤二朗の“二面性”が炸裂する2026年

 近年、佐藤二朗が扮するキャラクターが二分され、そのギャップが映像作品を大いに盛り上げている。現在放送中のドラマ『夫婦別姓刑事』(フジテレビ系)はどちらかといえば、彼のパブリックイメージを踏まえたキャラクターとして映し出されている印象だ。

 佐藤が演じる刑事の四方田誠は、バディを組む鈴木明日香(橋本愛)とともに難事件に立ち向かっていく。しかし、彼らは周囲に「夫婦」であることを隠して、同じ課で働いている事情から、事件とは別にさまざまな困難に見舞われる。明日香に好意を寄せる池田(中村海人)や2人の仲を疑う郡司(齊藤京子)たち同僚の追及をはぐらかしながらも、依然として綱渡りのような状況が続いており、慌てふためく四方田と明日香の姿はたびたび映し出されている。四方田に関しては、普段は同僚にツッコミを入れたり、おっちょこちょいな言動で周囲を騒がせたりとユーモラスな振る舞いが目につくが、前妻の皐月(清水美砂)が殺された事件の真実に迫るときや娘の音花(月島琉衣)と向き合うときは真剣な表情を見せる。このギャップこそが、佐藤の真骨頂といえるだろう。

『夫婦別姓刑事』©︎フジテレビ

 ドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズ(2011年/テレ東系)をはじめとして、福田雄一監督とタッグを組んだ作品での佐藤のコミカルな芝居は、長きにわたって観客の記憶に刻みつけられている。一見、アドリブのようにも思える芝居のなかで、独特の間と緩急のあるセリフで場の空気を支配する姿は、もはや恒例になっていた。

 そして、その力が遺憾なく発揮されるのが、並々ならぬ狂気を秘めたキャラクターを演じるときだ。映画『さがす』(2022年)で演じた原田智は、指名手配中の連続殺人犯を追って忽然と姿を消したあと、空白の時間で誰もが想像だにしない非道な行為に手を染める。第48回日本アカデミー賞助演男優賞にもノミネートされた『あんのこと』(2024年)では、主人公・杏(河合優実)の更生を助けるベテラン刑事の多々羅として、異なる顔を持つ人間の功罪を決して一緒くたにすることなく役柄に封じ込めた。

『爆弾』©呉勝浩/講談社 ©2025映画『爆弾』製作委員会

 そして、極めつけとなったのが、佐藤が2025年に公開された映画『爆弾』で演じた連続爆弾事件の容疑者・スズキタゴサク。原作小説の実写映画化が発表された直後から、作中でもっとも重要なキーマンであり、発言の意図や感情がまったく読めないスズキタゴサクを誰が演じるのかと思案していたが、佐藤のキャスティングが発表されたときは合点がいった。そして、予告映像で映し出された表情と乾いた笑い声を目の当たりにして、一瞬で佐藤が演じるタゴサクの虜になった。

 初見ではどこにでもいる中年男に見えるにもかかわらず、警察をからかっては不気味に笑う姿を観ていると、底なし沼のような狂気が空間を満たしていく。さらに、何人もの刑事と取調室で相対しながらも、決して隙を見せることなく、無邪気で悪意ある言動を繰り返す。いつの間にか相手をどす黒い感情で飲み込み、不用意な発言を引き出すタゴサクは、佐藤の圧巻の芝居によって実体を伴いながら現実に出現した。そう思わされてしまった。

 相手の感情をコントロールして、空間を支配する。スズキタゴサクというキャラクターに求められる能力を佐藤が有していることは、第49回日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞に輝いたことからも明らかだろう。Netflixで3月31日に本作の配信がスタートしたことで再び佐藤の芝居に脚光が集まっていることからも、あらためて観客に与えたインパクトの大きさを実感する。

『夫婦別姓刑事』©︎フジテレビ

 これまでの『夫婦別姓刑事』においては、ユーモラスな一面が多く描かれているが、中盤以降は劇中で幾度となく言及されている「消しゴム事件」や、妻を殺した犯人として四方田が疑う喜多村(竹原ピストル)と対峙するシリアスな場面も増えてくるだろう。

『名無し』©佐藤二朗 永田諒 / ヒーローズ ©映画『名無し』FILM PARTNERS

 さらに、5月22日には自身が原作を手がける漫画の実写映像化でもある映画『名無し』が公開予定。本作で佐藤が演じるのは、見えない凶器で白昼堂々と連続殺人を犯しながらも、証拠が見当たらないために殺戮を繰り返す異能の男だ。タゴサクとはまた違った角度から、悲惨な過去が生み出した歪な狂気と、奥底に秘めた見えない本心が入り混じる芝居を見せてくれるに違いない。

 佐藤のダークな芝居を立て続けに浴びているが、現在公開中の映画『SAKAMOTO DAYS』では、いつものコミカルな芝居で観客のイメージを揺り戻している。『夫婦別姓刑事』と『名無し』を続けて鑑賞しつつ、彼が演じる役柄のギャップを堪能するのもおもしろいかもしれない。

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