北村匠海が見せた豊かな表情に注目 『にじいろカルテ』が問う“普通”の定義
朔(井浦新)が佐和子(水野久美)の家で見せた涙から、過去に何かあることを察してどのように接するべきかと悩む真空(高畑充希)と太陽(北村匠海)。しかし朔は「気を遣わせるのは嫌なんだ」と、自分から妻の沙織(佐々木希)に起きたことを語り始めるのである。2月18日に放送された『にじいろカルテ』(テレビ朝日系)第5話は、先週に引き続き診療所のメンバーの心の内側に触れるエピソード。今回は、太陽が抱えるわだかまりにフォーカスが当てられていく。
虹ノ村診療所にテレビ番組の取材が入り、真空は「東京でも流れるのかな」と、自分がこの村にいることや病のことを母親に話していないと明かす。そんななか、取材クルーのカメラマンが足に怪我をしていることに気が付き、破傷風の予防接種を受けることを勧める太陽。一方で真空と朔は、太陽に少し元気がないことを気に掛けていた。そしてテレビ番組が放送される夜、にじいろ商店で集まる村人たちのもとに、例のカメラマンから感謝の手紙とシャンパンが送られてくる。すっかり酔っ払ってしまった太陽は、自分の抱えている悩みを喚くように吐露するのであった。
「俺は基本的に優秀。正しいの、でもそれだけなんです! 個性がない!」と絡み酒を始める太陽。難病と向き合いながら気丈に生きる真空であったり、妻を失った辛い過去を乗り越えて明るく振る舞い続ける朔であったり、それぞれがさまざまな事情を抱えている村人たちを前にしたことでなおさらに、「俺だけ何もないじゃん!」とフラストレーションを爆発させてしまうのである。しかしながら、そこで漠然と考えてしまうのは“普通とは何か?”ということに他ならない。
アドラー心理学にも「普通であることの勇気」として、人は自分自身を良くも悪くも特別だと思いたがる節があるという話が出てくるわけで、たしかに昨今よく聞く承認欲求というものは、まさにそれが顕著に現れたものであるといえよう。少なくとも、「自分が普通である」と思って「特別になろうとする」ことと「普通は嫌だともがく」ことは似て非なるものであり、太陽は後者の方だ。自分を普通だと思い込むうちに、それは確かな個性へと様変わりする。今回の劇中で描かれたテレビクルーへの対応しかり、脱臼した村人への処置のスムーズさもしかり、太陽の看護師としてのスキルは紛れもなく才能である。もはやそれは、良い意味で“普通じゃない”と思えるほどでもあり、まさに真空の(限りなく朔に向けられた)言葉がその本質を射抜いている。「自分で面白いって言ってる人ほど面白くなかったりする」。