『アンナチュラル』中堂系の影響も? 井浦新が『にじいろカルテ』で見せた“医者らしい顔”

『にじいろカルテ』井浦新の“医者らしさ”

 “西部警察気取り”のサングラスをかけ、いつも空気を読まない発言で真空(高畑充希)や太陽(北村匠海)と小競り合いを繰り広げている外科医(もとい、農家兼外科医)の朔(井浦新)。真空たちよりも前に虹ノ村にやってきた彼の、知られざる過去が明らかになった2月11日放送の『にじいろカルテ』(テレビ朝日系)第4話。真空と同様、“何か”を抱えて虹ノ村にやってきた朔にフォーカスを当てる今回のエピソードは、このハートウォーミングなドラマの輪郭をはっきりとさせる重要な役割を担っていたといえるだろう。

 いつも通り早朝から畑仕事をしながら、妻・沙織(佐々木希)のことを思い出す朔。そんななか、虹ノ村の隣村にあるキャンプ場で土砂崩れが発生したという連絡が診療所に届く。トリアージをするために現場に急行してほしいという要請をうけた真空たちだったが、出がけに霧ヶ谷(光石研)が朔にかけた「大丈夫?」という言葉が妙に気になってしまう真空。現場に到着すると、朔は2人にこう告げる。「患者の“大丈夫”という言葉は信じるな」。そして太陽に「見落としていることがあるかもしれない。無駄でもいいから言ってくれ」と、頼むのである。

 災害現場など傷病者が多数いる状況のなかで、治療の優先順位を決めるトリアージという作業。限られた医療資源をどのように割り振るかという、迅速かつ正確な判断が求められる、いわば“命の順番”を決める作業でもある。劇中の回想シーンで描かれる朔と沙織とのエピソードは、まさにそのトリアージの失敗によるものであった。医師として駆けつけた爆破事件の現場で、被害に遭った沙織に要救護性がそれほど高くない黄色の札をつけた朔は、事件の容疑者である男の救護に当たることになる。しかしその途中で沙織の容態は急変。そのまま命を落としてしまうのだ。

 容疑者の命を助け、妻の命を助けることができなかったという、永遠に消えることのない後悔が、一見陽気な朔のバックグラウンドにあるということが判明した今回。朝食の席で何気なく口にする「人はいつ会えなくなるかもわからない」という言葉は、朔が自分自身に言い聞かせているようにも思えてならない。そしてあの時と同じように“命の順番”を付けなければならない現場に足を踏み入れ、「大丈夫」と言う患者に対して「それはあなたが決めることではない!」と声を荒げるときの朔の表情には、もう絶対に誰も死なせないという強い覚悟が見える。

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