『鬼滅の刃』遊郭編、音柱・宇髄天元の活躍やいかに 視聴者と作り手の理想的な関係性とは

 『遊郭編』の舞台は言うまでもなく、遊女や花魁が住む色町の吉原である。『無限列車編』の興行的な成功から、児童にまでその人気が波及した『鬼滅の刃』だが、ここに来て「子どもも観るアニメなのに、遊郭をタイトルに入れているのはどうなのか」という親世代の意見が多く見受けられる。

 しかし、鬼が人を惨殺し、鬼の討伐描写で頭や手足が斬れるシーンも多い深夜アニメ作品であり、その劇場版も映倫基準では” 12歳未満の方は、保護者の助言・指導が必要“と決められているPG12区分だ。2021年2月現在、原作コミックスの累計発行部数が1億5000万部を突破して、既に多くの読者層に浸透している中、子どもに見せたくないという大人側からの一方的な意見はナンセンスに思える。借金を返さないまま遊女が逃亡を図る「足抜け」という用語を含めて、遊郭の在り方や意味を尋ねてきた子どもに適切な言葉をもって教えるのもまた保護者の役目だろう。原作読者には言うまでもないが、もとより作者は遊郭を美化した描き方をしていない。テレビシリーズも劇場版も、原作を尊重したアニメ化を進めている制作スタジオのufotableなら、まず原作者の意図を汲んだ描き方になるはずで、放送開始前からタイトルやテーマにクレームめいた言葉を投げるのは筋違いだ。

 もしも色町の知識がない未就学児童が『遊郭編』を観たがった場合、それにどう対応するかは保護者の判断にかかっているのであって、ufotableのスタッフは従来通りの作り方を変えずに臨んでほしいと思う。放送開始までに、そういった視聴者と作り手の良い関係が築けるよう願ってやまない。

■のざわよしのり
ライター/映像パッケージの解説書(ブックレット)執筆やインタビュー記事、洋画ソフトの日本語吹替復刻などに協力。映画全般とアニメを守備範囲に細く低く活動中。

■公開情報
TVアニメ『鬼滅の刃』遊郭編
2021年放送開始
原作:吾峠呼世晴(集英社ジャンプコミックス刊)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン:松島晃
アニメーション制作:ufotable
出演:花江夏樹、鬼頭明里、下野紘、松岡禎丞、小西克幸
(c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
公式サイト:https://kimetsu.com/anime/yukakuhen/
公式Twitter:@kimetsu_off

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