北村有起哉は観る者の身体に侵食する役者だ 映画やドラマで増す中毒性

観る者の身体に侵食する役者・北村有起哉

ちょっとしたスパイスを振りかけ、ならではの熱を潜ませる

『すばらしき世界』(c)佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

 『ゆれる』『永い言い訳』の西川美和監督が『復讐するは我にあり』を代表作に持つ、小説家、ノンフィクション作家の佐木隆三の小説『身分帳』を原案に映画化した『すばらしき世界』も、ヤクザ者を主人公にした人間ドラマだ。役所広司演じる元ヤクザで、人生のほとんどを刑務所の中で暮らしてきた三上が、外の世界で、市井の人として生きようともがいていく。ここでの北村は、弾かれる側ではなく、“社会”側の人間。福祉事務所のケースワーカー・井口として登場する。当然だが、ヤクザ風の匂いは微塵もない。主人公を取り巻く人として、元ヤクザの男の生活をネタにしようと近づきながら、三上の、完ぺきではないからこその人間性に触れ、絆を育んでいくテレビマンの津乃田(仲野太賀)、身元引受人の弁護士・庄司(橋爪功)、何かと気にかけてくれるスーパーマーケットの店長・松本(六角精児)、そして北村演じる井口らが登場し、交流を重ねていく。

 『ヤクザと家族 The Family』と同様、一度道を外してしまった男を受け入れない“社会”が映し出されるが、ここでは、そうした社会に属しながらも、はみ出てしまった男を受け入れてくれる“人”“個”はいることが描かれる。そして観客はラスト、『すばらしき世界』というタイトルを考え続けることになる。

 ヤクザ、刑事、テロリストにフリー記者etc.。北村は、さまざまな役を、ちょっとしたスパイスを振りかけて、北村ならではの熱を潜ませながら演じてきた。その場の空気を、作品のすべてを支配する演技とはまた違うが、その熱がどんな方向に放たれようと、作品のベースに入り込み、観る者の身体に侵食してくる。役者・北村有起哉、その中毒性にハマる人が、ますます増えていくに違いない。

■望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。

■放送情報
『書けないッ!? ~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:30~0:00放送
出演:生田斗真、吉瀬美智子、菊池風磨(Sexy Zone)、小野武彦、梅沢昌代、山田杏奈、潤浩(ユンホ)、北村有起哉、小池徹平、長井短、浜野謙太、岡田将生
脚本:福田靖
演出:豊島圭介、YUKISAITO
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
チーフプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー:服部宣之(テレビ朝日)、尾花典子(ジェイ・ストーム)、宮内貴子(角川大映スタジオ)
制作:テレビ朝日、ジェイ・ストーム
制作協力:角川大映スタジオ
(c)テレビ朝日

■公開情報
『ヤクザと家族 The Family』
全国公開中
監督:藤井道人
出演:綾野剛、尾野真千子、北村有起哉、市原隼人、磯村勇斗、菅田俊、康すおん、二ノ宮龍太郎、駿河太郎、岩松了、豊原功補、寺島しのぶ、舘ひろし
プロデューサー:河村光庸
制作:スターサンズ
配給:スターサンズ、KADOKAWA
(c)2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会
2020年/日本/136分/5.1ch/ビスタ/カラー/デジタル
公式サイト:yakuzatokazoku.com

『すばらしき世界』
全国公開中
出演:役所広司、仲野太賀、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有起哉、長澤まさみ、安田成美
脚本・監督:西川美和
原案:佐木隆三著『身分帳』(講談社文庫刊)
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会
公式サイト:subarashikisekai-movie.jp

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