北村有起哉は観る者の身体に侵食する役者だ 映画やドラマで増す中毒性

観る者の身体に侵食する役者・北村有起哉

土曜の夜にクスっと笑わせる曲者トリオを牽引

『書けないッ!? ~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』(c)テレビ朝日

 土曜夜に放送中の『書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』は、大河ドラマ『龍馬伝』や、連続テレビ小説『まんぷく』、ドラマ&映画の『海猿』『HERO』『ガリレオ』シリーズ(全てフジテレビ系)などを手掛ける脚本家・福田靖によるオリジナル作品。

 千載一遇のチャンスが舞い込んだ、売れない脚本家で主夫の圭佑(生田斗真)を軸に繰り広げられる本作。北村が演じるのは、ベストセラー作家の妻(吉瀬美智子)と子どもたちのために家事を担ってきた圭佑に、ゴールデンドラマの脚本執筆を依頼するドラマプロデューサーの東海林だ。圭佑の才能を買ったのではなく、もともと決まっていたメインライターの降板から、急遽、圭佑に声をかけたこともあり、「明日までにストーリー案、考えてきて!」と、初っ端からひどい無茶ぶりを繰り出し続ける。第4話では圭祐の手掛ける劇中ドラマである、人気俳優(岡田将生)主演の学園ヴァンパイアもの『富豪教師Q』の放送がスタートしたが、追い詰められる圭祐を前に、東海林Pが、軽さだけではない、仕事人としての顔を見せる一面もあった。

 人気脚本家の福田が、売れない脚本家を主人公に、勝手知ったるフィールドでフィクションを楽しんでいる本作。北村も、東海林Pをとても楽しそうに演じてる。小池徹平演じる監督と長井短演じるプロデューサー補との曲者トリオによる、息ぴったりのあり得なさ加減が絶妙で、話を重ねるごとに、曲者トリオの登場がクセになりそうだ。

ひとりの人間としての弱さ、痛み、苦しみをキリキリと切なく

『ヤクザと家族 The Family』(c)2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会

 リラックスタイムに放送中の『書けないッ!?』とはガラリと変わり、現在公開中の映画『ヤクザと家族 The Family』での北村は、ヤクザの若頭・中村を演じて、観る者の心に残り続ける。本作は、北村とは『新聞記者』でも組んだ藤井道人監督が、今の時代に生きるヤクザを見つめた骨太なヒューマンドラマ。舘ひろし演じる、自分を受け入れてくれたヤクザの組長・柴咲と父子の契りを結んだ、綾野剛演じる主人公・賢治の生きざまを、20年にわたり、3章に分けて描いていく。

 ある事件により、14年間の刑務所暮らしを終えて出所してきた賢治。塀の外では、暴力団対策法が施行されており、柴咲組も大きな影響を受けていた。家族のような繋がりを見せる柴咲組にあって、若頭の中村は、柴咲の女房といえる存在だ。「ヤクザの若頭を演じる、北村有起哉ね。それは似合うでしょ」などと簡単に想像してはいけない。中村からは、常に柴咲を支え、柴咲組という家族を崩壊させないために、強く立ち続けようとしているが、実はとても弱いひとりの人間の痛み、苦しみがキリキリと伝わり、切なさで胸を締め付ける。どのキャストも素晴らしい本作だが、北村の秘めたパワーにガッシリ掴まえられてしまう。中心として描かれないからこそ、中村の人生が気になって仕方のない人は多いはずだ。

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